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2013年10月19日(土)

市田書記局長の代表質問 参院本会議

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 日本共産党の市田忠義書記局長が18日の参院本会議でおこなった代表質問(全文)は次の通りです。


写真

(写真)代表質問する市田忠義書記局長=18日、参院本会議

 日本共産党を代表して安倍総理に質問いたします。

 私はまず、このたびの伊豆大島をはじめ、一連の台風などにより犠牲となられたみなさんに哀悼の意を表するとともに、被災者の救援、被害の復旧、生活の再建に、政府が全力を挙げることを求めます。

「3本の矢」で国民所得はさらに減少――消費税の4月増税は断念を

 消費税の増税問題についてお尋ねします。

 来年4月からの消費税率の引き上げには、何の大義も道理もありません。

 なによりも総理は、増税の是非について、主権者・納税者である国民の判断を求めたことは一度もありません。「税金をいくら払うかを決める権利は、為政者ではなく国民にある」、これが議会制民主主義のそもそもの原点であります。ところが政府・自民党は、先の参議院選挙でも、消費税増税を争点とすることを徹底的に避けつづけました。そして、選挙が終わったとたんに増税を押し付ける、これは議会制民主主義の根幹を破壊する暴挙というほかはありません。

 総理は、「『3本の矢』は世の中の空気を一変させました」とのべられました。

 しかし、1997年をピークに国民の所得は減り続け、労働者の平均年収は70万円も減少したままであります。こういう状況は「一変」どころか、ますます悪化しています。労働者の月給は15カ月連続で前年を下回るなど、あなたが総理になった今でも減り続けているではありませんか。いま働く人の38・2%、2042万人が非正規、その平均年収は国税庁の調査でも168万円です。公的年金の受給者の75・6%、2900万人が200万円未満の年金しか手にしていません。

 一方、物価だけは上がり始め、暮らしはますます大変になっています。中小企業は、長期にわたる不況のもとで、今でさえ消費税を販売価格に転嫁することができません。加えて円安による原材料価格の上昇分も価格に転嫁できずに苦しんでいます。税率8%で8兆円、10%になれば13・5兆円という、日本国民がいまだかつて経験したことのない史上最大の新たな負担に耐えられる力が、一体どこにあるとお考えなのですか。

 空前の大増税で国民から所得を奪い取ったらどうなるか。それは国民の暮らしと営業を破壊するだけでなく、日本経済を奈落の底へ突き落とし、財政危機をも増幅させることは、1997年の消費税の5%への引き上げの経験を引くまでもなく、明らかではありませんか。

 それを知っているからこそ、総理も6兆円規模の「景気対策」を実施するのではありませんか。しかし総理、消費税を増税すると景気が落ち込む。だから、景気を支えるために消費税を充てる、これほどばかげた話があるでしょうか。消費税を上げれば景気の落ち込みが心配だというのなら、消費税の増税をやめればいいではありませんか。

 しかも経済対策の目玉は、東日本大震災からの復興にあてる財源のうち、大企業の負担する復興法人税だけを前倒しで廃止して、減税してやるというものです。

 法人税はもともともうかっている企業にしかかかりません。赤字企業は支払いません。総理、あなたがいま言うべきセリフは、東日本大震災という未曽有の被害からの復興をはかるために、せめてもうかっている企業には、負担能力に応じてきちんと税金を負担してもらいたい、この措置を3年で終わらせないでもう少し続けてもらいたい、ということではありませんか。

 ところが安倍政権は、国民には所得税を25年間、住民税を10年間負担をさせ、そのうえ消費税増税を押し付ける。これを大企業奉仕の政治といわずして何と言うのでしょうか。

 消費税はそもそも所得の少ない人ほど重くのしかかる最悪の不公平税制です。日本共産党は、税金は、所得や資産に応じて負担するという「応能負担の原則」に立ち、富裕層と大企業への優遇税制を改めること、そして国民の所得を増やす経済の立て直しで、税収そのものを増やして財源を確保する「消費税に頼らない別の道」を歩むべきだと考えています。この道こそ、社会保障の拡充、財政危機、経済危機を一体的に解決する最善の道だとは思いませんか。

 「来年4月からの増税は国民生活と日本経済を悪化させることになる」――これは、今後の税制のあり方として消費税の増税が必要だと考えている人々も含めて、日本経済の現状と将来を真剣に考える多くの人々から共通して出されている懸念であります。少なくとも、この4月からの増税を断念することこそ、総理に求められている決断ではありませんか。

希望者全員の正社員化こそ賃上げへの道。「ブラック企業」規制を

 総理は労働者の賃上げのためにも法人税を下げる必要があるといわれました。しかし、そんなことを真に受ける国民はほとんどいません。それを言うなら、すでに大企業にため込まれている270兆円もの内部留保の一部を賃上げに回せ、とこそ言うべきではありませんか。

 そもそも、どうして賃金が下がり続けているのか。今年の「労働経済白書」は、「パートタイム労働者比率の上昇等により現金給与総額が減少」したと述べています。国税庁の調査でも、正社員の年収は468万円、非正社員は168万円であります。非正社員の増加が賃金を引き下げていることは歴然たる事実であります。ところが政府は、日本を「企業が世界で一番活躍しやすい国」にするのだといって、産業競争力強化法案を提出し、派遣労働を際限なく拡大するための改悪や、労働者を自由に解雇できる「特区」を作ろうとしています。これでどうして、賃上げなどと言えるのか。非正規労働者をへらし、希望する人はみな正社員への道を開くこと、これこそもっとも有効な賃上げへの道ではありませんか。

 いま社会的大問題になっている「ブラック企業」の問題も、根底には非正規雇用の蔓延(まんえん)があります。「正社員として働きたい」という、若者の願いを逆手にとって、連日、深夜にわたる長時間労働やパワハラなどでボロボロになるまで働かせる。

 こんな働かせ方の根絶こそ急務です。そういう時に、正社員から派遣への置き換えを完全自由化したり、日雇い派遣を無制限に復活させる、あまつさえ雇用のルールの治外法権地域、解雇自由の「ブラック特区」の創設など、とうてい許されることではありません。こんなことがまかり通れば、日本全体の労働条件の悪化をもたらし、日本のものづくりも、企業経営そのものも、そこで働くすべての人たちの生活にも、そして、少子化の克服など日本社会の成り立ちそのものにも取り返しのつかない被害をもたらすことになってしまいます。

 わが党は今国会の開会日、15日に、長時間労働の制限、離職者数の公表、パワハラの禁止などを柱とした「ブラック企業規制法案」を本院に提出しました。こうした立法の必要性についての総理の認識をうかがうとともに、ぜひ各議員、各会派におかれましては速やかに審議をしていただき、成立させていただくことをこの場からお願いするものであります。

聖域なき交渉――TPPから撤退の決断を

 次にTPPについてであります。

 私はことしの2月1日、この本会議場で総理に、TPP交渉についての方針や協議の実態について「すべての情報を、国会と国民の前に開示すべき」だと求めました。総理は、「状況の進展に応じて、しっかりと国民の皆様に情報提供してまいります」と答弁されました。そこでお聞きします。バリで行われたTPP交渉で、日本がアメリカに示した自由化率は92%と報道されているがそれは事実ですか。もし事実なら、これまで日本が関税撤廃表明をしたことのない929品目のうち240品目の関税撤廃を表明をしたことになります。それはどういう品目か、なぜそうしたのか、「しっかりと情報提供」していただきたい。

 総理はまた私の質問に、「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉には参加いたしません」とも明言されました。ところが自民党の西川TPP対策委員長は、農産物の重要5項目を関税撤廃の例外から「抜けるか抜けないか、検討させてもらわなければならない」と述べました。聖域とはいうまでもなく「手を触れてはならない分野」という意味であります。ところが、それを検討の対象にする。これは、すでに5項目が聖域ではなくなっていることを示しています。それならば、総理は、総選挙、参院選挙と2度にわたって国民に公約し、本会議場でも明言した通り、TPP交渉から撤退する決断を行うべきではありませんか。明快な答弁を求めます。

 総理はTPPへの参加を前提に、農業の産業化と民間企業の参入・投資を促されました。しかし、もっとも肝心な、食料自給率の向上には一切触れようとされません。いくら自由貿易の時代であっても、食料主権を守ることはいまや世界の流れです。自給率向上の明確な目標を掲げること、そのために、安全で多様な発展を支えてきた日本の農家を守ることこそ、政治の目標に掲げるべきではありませんか。

原発汚染水の現実を認め、抜本解決を最優先に

 福島第1原発の放射能汚染水問題は極めて深刻な現状にあります。総理が、「コントロールされている」「完全にブロックされている」と発言した後でも、「汚染水タンクからあふれだした」「パイプの継ぎ目から漏れていた」「港湾だけでなく外洋にも直接漏れ出していた」など、ほとんど連日のように新たな、汚染の広がりが続いています。東電の広瀬社長は国会で「もぐらたたきのような状態が相変わらず続いているのは全くの事実だと思う」と述べ、コントロールとは程遠い状態にあることを認めざるを得ませんでした。総理、あなたは、汚染水の現状がどうなっているのか、何がわかり、何がわかっていないのか、どこに問題と危険があるのか、国民にはっきりと説明することができますか。

 それもできないのに、国際社会にたいして総理は「日本は原発の安全技術でこれからも世界に貢献していきます。放棄することはありません。福島の事故を乗り越えて、世界最高水準の安全性で、世界に貢献していく責務がある」と述べ、原発の再稼働と輸出に異常なほど執心されています。

 目の前で繰り返されている現実、「いったん事故が起きたら制御できなくなるのが原発という技術」であるということ、しかも発電によって蓄積される放射性廃棄物の処理方法すら確立されてはいないことを、総理は率直に認めるべきであります。

 いま原発は1基も稼働していません。それでも国民生活は維持され、そのことによる経済の破たんもありません。この時をおいて「原発ゼロ」の決断をするときはないではありませんか。いかがでしょうか。

 そしていま直ちにやるべきは、原発への態度や将来のエネルギー政策の違いを超えて、汚染水問題の抜本的解決を最優先に据えるために、再稼働と原発輸出のための準備や活動を中止することではありませんか。

今も水俣病に苦しむ方が多数――「克服」といえない

 総理は先日開かれた、「水俣条約外交会議」に寄せたメッセージで「水銀による被害とその克服を経た我々」と述べられました。いまだに悲惨な後遺症に苦しむ方がたくさんおられます。水俣病の症状があるのに、年齢と地域を限られて救済措置の申請もできずに苦しんでいる患者が数多くいます。被害住民だけではなく熊本県も、かつて不知火(しらぬい)海沿岸に居住したことのある47万人の健康調査を求めましたが、それすらも歴代政府は拒否し続けてきました。このどこが「被害の克服」と言えるのですか。総理が今やるべきは、被害の実態調査・健康調査と、1人も残さず患者の救済を図ることではありませんか。いかがですか。

大国の無法な干渉が「集団的自衛権行使」――この現実を認めるか

 国の進路にかかわる重大問題である集団的自衛権の問題についてうかがいます。

 集団的自衛権行使容認への総理の前のめりの姿勢に国民は大きな危惧を抱いています。

 そもそも、集団的自衛権というのは、日本の「防衛」の問題でもなければ、アメリカ本国の「防衛」の問題でもありません。これまでの歴史で、国連憲章51条にもとづく「集団的自衛権」の発動として行われたのは、アメリカのベトナム侵略戦争、旧ソ連のチェコスロバキアやアフガニスタンへの侵略など、大国による無法な干渉、軍事介入の戦争でした。総理は、この事実をお認めになりますか。否定されるなら、国連憲章51条にもとづく集団的自衛権が、当事国の「防衛」のために発動された事例を具体的にあげてください。

 日本の現実の政治で、集団的自衛権が問題にされてきたのは、インド洋やアラビア海、イラクやアフガニスタンでのアメリカの戦争への、あけすけな自衛隊の参戦要求でした。しかし、「集団的自衛権は行使できない」という憲法解釈があったからこそ、「非戦闘地域に限る」とか、「武力の行使はできない」など、自衛隊の海外での戦闘行為=戦争行為を禁止する「歯止め」が働いてきたのです。この「歯止め」を取り払って、米軍と肩をならべて海外で「戦争をする国」につくりかえる―これが集団的自衛権行使の現実の狙いではありませんか。答弁を求めます。

 憲法9条を変えなければ集団的自衛権の行使はできないというのが、これまでのいっかんした政府の公式の解釈でした。その解釈を、まるでクーデターのように、内閣法制局長官の首をすげ替えてまでして覆し、集団的自衛権の行使を認めるならば、それは実質的に憲法9条改正と同じ効果をもつことになるではありませんか。本来なら衆参両院の3分の2以上の賛成と国民投票における過半数という憲法改定手続きを経なければ許されないことを、解釈変更の閣議決定だけで実現してしまう。「集団的自衛権」の是非についてどういう立場に立っていようとも、こんなやりかたが許されていいはずはありません。こんなことがまかり通れば、憲法が憲法でなくなってしまう。立憲主義のもとで、決して踏み外してはならない最低限のルールを突き崩す、このような行為は断じて許されないと考えますが、総理の見識をただします。

国民の目・耳・口ふさぐ「秘密保護法案」は断念を

 政府が今国会に持ち出そうとしている「秘密保護法案」は、憲法が保障する基本的人権を踏みにじり、米軍とともに戦争をする体制づくりの一環と言わなければなりません。その中身は、保護すべき「秘密」が政府・行政の裁量次第でいくらでも広げられること、国民は何が「秘密」なのかも知らされず、それを知ろうとした国民もメディアも重罪とされる、国会による「秘密」の調査も制限される、など、およそ民主主義にとって最も大切な、国民の知る権利、言論・表現の自由を侵害するものにほかなりません。

 日本共産党は、戦前のように国民の目も、耳も、口もふさぐ、悪法の国会提出は断念するよう強く求めるものです。答弁を求めます。

首相の暴走に国民は危機感――暮らしと平和守るため全力

 最後に、総理は先の参議院選挙の結果、「国民から困難を乗り越えていけ」と背中を力強く押していただいたと、述べられました。しかし、そうした総理の政治姿勢にこそ、多くの国民は危うさを感じています。消費税、TPP、原発、集団的自衛権、秘密保護法…どれをとっても国民の意思とはかい離した暴走と言わなければなりません。日本共産党は、こうした安倍内閣の暴走に不安と危機感をもつ多くの国民と手をたずさえて、暴走に歯止めをかけ、国民の暮らしと平和を守り、発展させるために全力を挙げることを述べて、質問を終わります。


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