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2013年3月15日(金)

“選挙権行使 胸張って”

成年被後見人訴訟 裁判長が語りかける

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(写真)勝訴の判決を受けて報告集会で感謝の言葉をのべる名児耶匠さん(右から2人目)=14日、東京都内

 「名児耶(なごや)さん、どうぞ、選挙権を行使して、社会参加してください。堂々と胸を張って、良い人生を送ってください」―。14日、東京地裁で成年被後見人選挙権訴訟の判決を出した後、定塚誠裁判長は、原告の名児耶匠(たくみ)さん(50)=茨城県牛久市=にゆっくりと語りかけました。法廷内は傍聴者の拍手に包まれました。

 判決後の会見で、匠さんは「また、選挙に行けるようになってうれしいですね。お父さん、お母さんといっしょに選挙に行きたい」と喜びました。

 「娘はこれまで選挙をしてきた。後見人がついたら能力が落ちるわけではないのに、選挙権を行使できないのはおかしいと訴えてきたことに応えてくれた判決だった。うれしい」。父親の清吉さん(81)は、感慨無量の表情で語りました。

 匠さんが自立した生活を送るための必要な支援だと考えて、成年後見制度の申請をした清吉さん。「私が申請しなければ、娘の選挙権は奪われずにすんだ。勝訴判決を勝ち取り、胸のつかえがおりた」と笑顔で話しました。

 杉浦ひとみ弁護士は「判決は、成年被後見人が選挙権を奪われるとする公選法の規定は制度趣旨に反すると明確に判断した」と指摘。判決が、障害者のノーマライゼーション(等しく生きる社会の実現)という視点にも触れていることを評価しました。

 同訴訟を支援してきた、ろう重複障害者施設の施設長の花田克彦さんは「判決は投票権利を取り戻せたという意味で心強かった。今後いつから投票できるか気になっており、仲間と一緒に投票に行ける日を心待ちにしています」

解説

障害者権利条約批准へ

公選法の改正は急務

 判決は、成年被後見人は選挙権が奪われるとする公職選挙法の規定は憲法違反で無効だと明確に判断しました。

 高齢者や障害者本人と財産の保護を目的として明治時代に制定された禁治産制度は、その保護は強調するものの、本人の基本的人権は重視していませんでした。

 成年後見制度は禁治産制度に替わり2000年、障害者のノーマライゼーション(等しく生きる社会の実現)という理念に基づき、障害者の自己決定を尊重し、残存能力を活用しながら生活を支援することを目的として導入されました。

 ところが、旧禁治産制度を引き継いだ公職選挙法の規定で、被後見人は選挙権を奪われるのです。

 判決は、成年被後見人の選挙権を奪うことは、成年後見制度の理念、国際的な潮流にも反すると指摘しています。

 国連の障害者権利条約は、約130の国・地域がすでに批准しています。同条約がうたう障害者の人権保障と社会参加の実現に向けて、政府は2010年から、国内の関連法の抜本的な見直しをすすめています。

 障害者権利条約は、障害者が投票し、選挙される権利と機会を確保することなどを、締約国に求めています。

 こうした観点からも、被後見人になると選挙権を奪われるという公職選挙法の規定は削除しなければなりません。

 判決は、障害者権利条約批准に向けた大きな第一歩となります。(岩井亜紀)


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