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2012年9月30日(日)

生活保護

「貧困は個人責任」公的責任は放棄

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 厚労省の「たたき台」に貫かれているのは、増える生活保護費をどう抑えるかの発想です。親族への扶養義務の強化で受給申請を抑制させ、受給者に対しては“自立・就労支援”の名で、保護からの追い出しを狙っています。

 「生活支援戦略」というなら、まず必要なのは、生活に困窮しながら生活保護を受けていない600万近い世帯への漏給をなくす対策です。最低生活費を下回る所得しかない世帯のうち生活保護を受けているのは15%程度で、欧州諸国に比べ極端に低い数字です。

 生活保護の増加は貧困の増大の反映です。求められるのは、非正規雇用や低賃金、無・低年金の改善など、貧困を減らす社会的な対策です。

 ところが、「たたき台」は、貧困に陥った責任は受給者個人にあり、“怠惰で不正をしかねない”という受給者観に立っています。

 そのために、受給者を管理し、受給者の人権を侵害してかまわないといわんばかりのものになっています。

 健康診断の結果を福祉事務所が入手可能とする案は、個人情報保護法のプライバシー保護は生活保護受給者には適用しないというものです。そんなことが、「健康状況を踏まえた効果的な助言指導」のためなどとして正当化されるのか。

 福祉事務所の調査権限を「保護費の支出状況」にまで拡大することも打ち出しています。「生活保護費の使い道は自由」は判例で確認されており、その原則を「不正受給対策」を口実に踏みにじるものです。

 生活保護費を節約してかけてきた学資保険の満期金を福祉事務所が収入として認定し、保護費を減額したことからたたかわれた福岡学資保険裁判は、「憲法25条の生存権保障の目的である人間の尊厳にふさわしい生活を送るためには、被保護者が自らの生き方や生活を自ら決する必要があり、そのためにもいったん支給された保護費の使途は原則として自由でなければならない」(1998年の高裁判決)と確認しています。

 本来、保護を受けられる貧困層が受けていない問題には全く手をつけようとしないばかりか、ますます受給しにくくする「生活支援戦略」。すべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障することを国の責任とする憲法25条を投げ捨てるものです。(鎌塚由美)


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