2012年4月28日(土)
加害者救済の東電事業計画
国民への負担は筋違い
東京電力は、福島第1原子力発電所の事故の処理に関する巨額な負担により実質的には債務超過であり、破綻状態です。東電の新会長には、電力会社の経営を監視する側の原子力損害賠償支援機構の下河辺(しもこうべ)和彦運営委員長が就任します。「レフェリー(審判)が、プレーヤーになるようなもの」との批判の声もあがっています。
今回、東電と原子力損害賠償支援機構が作成した「特別事業計画」は、その東電に対し1兆円の公的資本を投入します。しかも、東電の収益拡大のための電気料金の値上げ、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働などを盛り込んでいます。
公的資本を投入することで政府は、東電を実質的に国有化するわけですから、巨額融資をおこない原発を推進してきた大銀行(メガバンク)には債権放棄を求めるべきです。大株主の責任も問わない計画では、原発事故の「加害者救済」計画といわざるをえません。
計画では、13年度に柏崎刈羽原発を再稼働させることを前提に、事業収益を上げるとしています。しかし、福島第1原発事故の原因は究明されておらず、被害は時間的にも空間的にも拡大し続けています。事故収束に程遠い状況にもかかわらず、原発の再稼働を計画するのは、事故を引き起こした当事者として無反省であり、許されるものではありません。
大阪市立大学大学院経営学研究科の除本理史(よけもと・まさふみ)准教授は「原発を再稼働させることで、経営体として存続させようとしているのではないか。事故を起こしたことを踏まえて、原発ゼロの方向で電力供給体制を見直すことが必要です」と指摘します。
東電は事故加害者として、徹底的な事故原因究明、事故収束に全力をあげるべきです。甚大な被害をもたらした原発事故を繰り返さぬよう、原発からの撤退を決断するべきです。
7月に家庭向け電気料金を10%程度値上げすることも盛り込まれています。電気料金の値上げは、原発事故対応にかかる東電の負担を国民に押し付けるものです。4月には、企業など事業者向け電気料金の値上げを実施し、事業者から怒りの声がひろがりました。
原発事故処理費用を電気料金の値上げで国民に転嫁すべきではありません。原発事故の責任者である東電とその株主、大口の貸し手である大手金融機関など利害関係者が責任を取り、債権放棄をするなどして事故処理の負担をすべきです。
(柳沢哲哉)
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