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2012年4月15日(日)

事故激増の高圧ガス施設

「特区」認定後に4倍化

報告義務・立ち入り調査ない「自主検査」

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 高度経済成長期を担った日本有数の高圧ガス施設で事故が多発しています。茨城県「霞ケ浦」の東南に広がる鹿島臨海工業地帯。3月19日、住友金属工業鹿島製鉄所構内で起きた死傷事故も、いまだに原因が特定されていません。検査体制の問題点が浮かびあがっています。 (遠藤寿人)


写真

(写真)エア・ウォーターの事故があった住友金属工業内=茨城県鹿嶋市

 事故は同構内にある総合ガス会社「エア・ウォーター」(本社・大阪市)ケミカルカンパニー鹿島工場から出火。作業員2人が死亡、1人がやけどを負いました。原料製品倉庫(456平方メートル)を全焼しました。

原因は不明

 原因は科学捜査研究所(科捜研)も加わり調査中です。地元消防本部が6日、鹿嶋市議会に途中経過を報告。3人は倉庫クリーンルーム内で製品を振動ふるい機にかけ、袋詰め梱包(こんぽう)の作業中でした。製品は粉体の電子材料で「火災危険がある物品」で分析中です。エア社は「出荷前の最終工程で、火の気を排除している所なので驚いている。住友向けの製品ではない」といいます。

 地元では「単なる火災で2人も亡くなるのはおかしい」「静電気による粉じん爆発じゃないか」(元住友社員)などの話が飛びかっています。

 日本共産党の立原弘一市議は、「2人の労働者の方が亡くなっている。安全を守る立場で客観的な調査をしてほしい」と話します。

 エア社は2000年に合併でできた産業ガス、医療用ガスなどの総合ガス会社。大株主に「住友金属工業」や「住友信託銀行」(11年9月30日現在)が名を連ねます。同社は02年に「住金ケミカル」と合併。現在に至っています。

 エア社の遺族宅で焼香すると、奥さんと赤ちゃんを抱いた息子さん夫婦が、「まだ事故について詳しい説明を受けていない」と静かに話しました。

“野放し”に

 日常の検査体制に問題はなかったのでしょうか?

 「高圧ガス保安法」により事業者は、取扱量が大きい「1種」とその他の「2種」に分かれます。年1回、設備を止め、都道府県知事による「保安検査」が義務づけられている1種事業者に対し、「2種事業者」は、「自主検査」で、記録の保存義務はありますが、「報告」義務はありません。

 エア社は09年に物質合成のプラント施設を縮小、1種事業者から「2種事業者」になりました。同社は年2回、「自主検査」を行い、事故5日前の検査では「問題がなかった」といいます。

 県内の1種事業者371、2種事業者498。県は「立ち入り調査」を行っていますが、「数が多いので1種が中心になる」といいます。報告義務もなく、立ち入り調査もない―。2種事業者は“野放し”に近い状態です。

「保安」緩和

 立原市議は2月議会で、同工業地帯で発生した事故が、「鹿島経済特区」認定(2003年)後に激増していることを追及しました。

 1976年から昨年末までの35年間に発生した事故は261件。死者13人、負傷者99人。うち「経済特区」後の03年以降の9年間の事故は151件、死者6人、負傷者75人でした。「経済特区」前の26年間の年平均4・2件だった事故が、「特区」後は16・8件と4倍に増えているのです。

 「経済特区」は小泉構造改革の一環。全国に先駆け「特区」認定を受け、「保安規制」が大幅に緩和されました。

 立原市議は「企業を監視すべき行政が規制緩和の旗振り役を買って出ている。企業との緊張関係もなくなって当然だ。一つ一つの事故に固有の原因はあるが激増している。安全対策に警鐘を鳴らすべきだ」と話します。


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