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シリーズ コロナ時代の災害避難(6)

対象者把握・必要数の確保... 福祉避難所の拡充へ課題


 福祉避難所は、主に高齢者、障害者、乳幼児、妊産婦、傷病者、内部障害者、難病患者など、一般避難所での生活が困難な人とその家族を入所の対象としています。(「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」2016年4月)
 建物が耐震性の基準を満たしている、土砂災害特別警戒区域に入っていない、バリアフリー化されているなどの条件を備えた福祉施設や公共施設などを自治体が指定します。(表)

特別な配慮

 福祉避難所では、災害救助費の基準額の加算や介護員などの配置の費用、ポータブルトイレの借り上げ費用、紙おむつ、ストーマ(人工肛門・ぼうこう)用装具など消耗器材の購入費―などが「特別な配慮のために必要」として保障されます。

 もともと、阪神・淡路大震災の総括から、その必要性が強調されるようになりました。しかし、東日本大震災では犠牲者の過半数を高齢者が占めました。内閣府は「福祉避難所の事前指定は十分とは言えず、また対応体制も満足できるものとは程遠かった」(同前)と認めています。

 拡充するためには、さまざまな課題があります。

 まず、対象者を把握するためにどうするのか、その際、個人情報の漏えいや不正使用の対策が必要です。

内閣府「指定避難所等における良好な生活環境を確保するための推進策検討調査報告書」から
内閣府「指定避難所等における良好な生活環境を確保するための推進策検討調査報告書」から

 コロナ禍のもとで、対象者に見合った数が確保できるのかも問われます。指定避難所のうち福祉避難所があるのは10・6%(18年10月1日現在)。施設などと協定をむすんで確保した福祉避難所数は2万2579カ所ですが、65歳以上の高齢者人口が約3600万人のもとで、対応できるでしょうか。

 住民にどのように周知するのか。16年の熊本地震で熊本市は、176施設を福祉避難所に指定し、約1700人を受け入れるとしていましたが、利用したのはわずか104人でした。(「毎日新聞」4月25日付)
福祉避難所で避難者の相談にあたる介護員などを基準どおり配置できるのか、社会福祉施設の場合に既存の入所者との関係をどうするのか―など課題は山積しています。

発熱対応は

 そのうえに、コロナ禍への対応という困難がつけ加わります。

 内閣府は、「特定の避難者の専用の避難所」との考え方にもとづき、従来の福祉避難所とあわせて、「発熱・咳(せき)等の症状がある人」、「濃厚接触者」を対象者に、それぞれの専用の避難所を事前に設定することを、自治体に求めています。

 各自治体が、福祉避難所を充実させながら、新型コロナに対応する専用の避難所を確保していくために、財源支援も含めて国として本格的な支援が必要になっています。


福祉避難所に指定される施設
・一般の避難所となっている施設(小・中学校、公民館など)
・老人福祉施設(デイサービスセンター、小規模多機能施設、老人福 祉センターなど)
・障害者支援施設など(公共・民間)
・児童福祉施設(保育所など)、保健センター、特別支援学校
・宿泊施設(公共・民間)

「しんぶん赤旗」2020年06月27日


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