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シリーズ コロナ時代の災害避難(5)

解決するべき課題は山積だが ホテル・旅館の活用に注目


内閣府「新型コロナウイルス感染症を踏まえた災害対応のポイント【第1版】」から
内閣府「新型コロナウイルス感染症を踏まえた災害対応のポイント【第1版】」から

 災害救助法9条は「都道府県知事は必要があると認めるときは旅館等の施設を管理することができる」と規定しています。また、その弾力的運用として民間の旅館、ホテル等を借り上げ、避難所として活用が可能としています。

 新型コロナ禍のもとで、避難所としてのホテルや旅館の活用に注目が集まりました。

費用負担は

 政府は4月7日、「避難所における新型コロナウイルス感染症への更なる対応について」との実務連絡を出しました。そこでは、通常よりも可能な限り多くの避難所の開設とともに、「ホテルや旅館の活用等も検討すること」を求めています。

 さらに、5月27日には費用負担を明らかにしています。

 ▽災害救助法が適用された場合は、ホテルや旅館などの借り上げ、輸送、維持、管理にかかる費用は国庫負担▽同法が適用されない場合でも、今年4月1日以降に実施される費用については、「地方創生臨時交付金」の活用が可能―などです。

避難所として利用できる準備をしているホテルや旅館
避難所として利用できる準備をしているホテルや旅館

 武田良太防災担当相は、16日の記者会見で、避難所として利用できる準備をしているホテルや旅館が約1200カ所となったと発表しました(別表)。また、約930カ所の省庁の施設も貸し出し可能としています。

 しかし、この数で足りるのかという問題があります。また、人口密集地と過疎地でホテルや旅館の確保に偏りがないのかという問題も存在しています。

自治体では

 さらに自治体の現場では解決すべき問題が山積しているのです。

 大雨、暴風、高潮の同時多発災害となった昨年の台風19号。ある東京23区内の防災対策室の担当者に話を聞きました。

 「個別に協力してくれるホテルにお願いしている」としつつ、次のような課題を挙げています。

 ―国基準は1泊3食で7000円程度(熊本地震と同等の措置)だが、23区内では、とても足りない。9000円ぐらいする。

 ―今は休業中のホテルでも災害時に満室ということもありうる。協定を結んでも、発災時に部屋を確保できるのか。

 ―既存の宿泊者との関係で、発熱などコロナ感染の疑いの方は利用できるのか。

 ―対象者は高齢者、障害者などだがその選定を、だれがどう行うのか。公平性は確保できるのか。

 また、この間の災害でも、ホテルや旅館での避難者に必要な情報や支援が届かない問題が明らかになっています。

 厚生労働省は、2011年3月25日に、災害救助法に基づき、避難所に収容された人だけでなく、地域の物流やライフラインが確保されるまでは、自宅で避難している人も食料や炊き出しの対象としていました。しかし現実には、連絡の取れない被災者は食べるものに窮する生活を余儀なくされました。

 こうした問題を一つひとつ解決していかないと、実際に災害が起こったときに、対応できなくなります。

 国として、財政措置はもちろんのこと、自治体や住民の意見をくみ上げて対応していく姿勢と努力が求められています。

「しんぶん赤旗」2020年06月25日


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