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シリーズ コロナ時代の災害避難(1)

「3密」の典型―避難所 政府はどうするのか


内閣府と消防庁と共同で出した啓発ポスタ―
内閣府と消防庁と共同で出した啓発ポスタ―

 地球規模の気候変動によって災害の激甚化が進むなか、新型コロナウイルス感染症が世界を覆っています。災害避難所での感染リスクを最小化しながら、どう生命をまもり抜くか...。政治と行政に鋭く問われています。〝コロナ時代〟の災害避難はどうあるべきか、シリーズで考えます。

 密閉・密集・密接...〝避難所は「3密」の典型では〟――新型コロナの影響で、災害時に避難所への移動を避ける傾向が強まり、結果的に「被害を大きくするのではないか」との懸念も生まれています。

避難者来ず

 梅雨前線が九州に停滞した5月16日、熊本県を中心とする九州各地で24時間雨量の記録を更新する大雨が降りました。このとき熊本県美里町では「避難準備・高齢者等避難開始情報」が発令され、町内4カ所の避難所への避難がよびかけられたものの、「避難した町民はゼロだった」(9日付「朝日」)と報道されました。

避難所が忌避される現状に危機感を抱いた内閣府は5月、消防庁と共同で啓発ポスターを作成、「新型コロナウイルス感染症が収束しない中でも、災害時には、危険な場所にいる人は避難することが原則です」との周知を始めました。それでも、自分がいる場所が「危険な場所」なのかどうかは、自治体が作成したハザードマップ(被害予測地図)と照らし合わせて判断するしかありません。

新型コロナの感染リスクを承知の上で避難所に行くという選択は、これまでの「空振りを恐れず避難する」との心構えの「壁」となり、心理的なハードルを大きく引き上げています。

改良と増設

 それではどうすればいいのか。政府(内閣府、消防庁など)は、「緊急事態宣言」を発令した4月7日、都道府県や保健所設置市などに対する事務連絡で、新型コロナ感染防止策を講じた避難所に改良したり新規に開設したりして、「可能な限り」増設するとともに、ホテル・旅館の活用、自宅療養者の在宅避難を含む適切な避難の検討を求めました。

 特に「避難所の衛生環境の確保」「十分な換気の実施」「発熱、咳(せき)等の症状が出た者のための専用のスペースの確保」などは初めての提起であり、自治体側に戸惑いも広がりました。

 しかも、これらは地方自治法245条に基づく「技術的助言」で、この時点では財源の裏付けもありませんでした。「平時の事前準備及び災害時の対応の参考」として政府に示されたものですが、「緊急事態宣言」の対応に追われる自治体の多くは、対応を〝先送り〟。「宣言」解除後のまさにこれから、避難準備の具体化が問われていくことになります。

「しんぶん赤旗」2020年06月18日


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