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「文楽守れ」文化人が声

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国立文楽劇場=大阪市中央区

 大阪市中央区にある国立文楽劇場で、8日から開かれている「文楽鑑賞教室」。学校行事で訪れた府立高校生や小中学生らで会場があふれました。

 太夫・三味線・人形遣いが一体となりつくり上げる文楽の世界に、身を乗り出して聞き入る人や、親が子を思い涙を流す場面では目頭を押さえる女子学生の姿が見られました。

 公演のたび見に来るという神戸洋子さん(47)=仮名=は「太夫の語りと人形で、あそこまで感情をあらわせるということに感動します」と文楽の魅力を語ります。

助成25%削減

 ところが、大阪市の「市政改革プラン(素案)」では、市民サービスの大幅カットと合わせて、大阪フィルハーモニー交響楽団や文楽協会への助成金の25%削減を打ち出しました。

 なかでも文楽への橋下徹市長の攻撃は異常です。今年4月には、自身のツイッターで「文楽の世界は身分保障の公務員の世界になっている」と投稿。今月も「特権意識に甘え、(略)世間とかけ離れた価値観、意識のもとに伝統に胡坐をかいてきた」とののしりました。

 神戸さんは、橋下氏の発言に「何年も先まで考えて発言してるんですかね。伝統あるものを短い期間でどうにかしようだなんて、腰かけのような人になんでそんなことされないかんのと腹立たしい」と語ります。

 反撃も始まっています。季刊雑誌『上方芸能』の特集「文楽を守れ!」にはドナルド・キーンさんや竹下景子さんら132人の学者・文化人がメッセージを寄せました。6日、橋下市長と面会した落語家の桂三枝さんは「頑張れるだけ頑張るのが芸人の務めだが、守らなければ続かない芸もある」とちくりと批判しました。

競争持ち込む

 『上方芸能』発行人の木津川計さんは言います。

 「文化には、"もうかる文化"と"もうからない文化"がある。文楽は1体の人形を3人で操る。太夫も三味線もさらには裏方も、何人も必要な集団芸術。オーケストラやオペラなどと同じで、人件費や制作経費などをすべて入場料にかぶせれば、普通の庶民の所得では行くことはできなくなる」

 木津川さんは、欧州では芸術に手厚い公的助成がされているのに対して、日本は国のレベルで言っても文化予算が少ないと指摘。そのうえ文化に競争原理を持ち込む橋下市長のやり方を批判します。

 「文楽を担っている彼らは、懸命に伝統の芸を守っている。そのために内部で競い合うという競争心は必要です。しかし、文楽も落語も歌舞伎も、それぞれの特性がある。それを無視してただ競えと、そんな乱暴な話はありません」

(つづく)

(「赤旗」2012年6月14日付)

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