2025年11月5日(水)
主張
高市首相の経済政策
アベノミクスからの決別こそ
高市早苗首相は、安倍晋三元首相が推し進めたアベノミクスの継承で、物価高に苦しむ国民をさらなる苦難に突きおとそうとしています。
金融政策では、高市氏は昨年9月の自民党総裁選の際、「金利をいま上げるのはアホ」とのべ、日銀の利上げに反対しました。10月4日の記者会見でも、国民が深刻な物価高に苦しんでいるのに、「デフレ(物価の持続的下落)じゃなくなったと安心するのは早い」「金融政策に責任を持たなきゃいけないのは政府」などと発言。金融政策に独立性をもつ日銀にあからさまに圧力をかけてきました。
日銀は昨年3月、安倍元首相のもとでデフレからの脱却を名目として実施されたマイナス金利を含んだ「異次元」の金融緩和を転換し、17年ぶりの利上げを決めました。金融政策の正常化に一歩を踏み出し、その後、2度利上げし、さらなる利上げも視野に入れていますが、新政権の発足後初の会合で、追加利上げを見送っています。
■格差広げ物価高騰
高市氏が日銀に干渉するのは、安倍元首相の継承者を自任しているからです。自らの経済政策を「サナエノミクス」と名付け、基本路線は「ニュー・アベノミクス」であると著書で述べています。
アベノミクスは、第1の矢として「大胆な金融緩和」、第2の矢として「機動的な財政政策」、第3の矢として「民間投資を喚起する成長戦略」を掲げました。
しかし、いずれも日本経済に悪影響を及ぼしました。
第1の矢は、日銀に巨額の国債などの購入を押しつけながら、日米の金利差による円売りから円安を引き起こし、自給率の低い食料、エネルギーなどの輸入価格が上昇し、物価が高騰しました。
一方、金融緩和による株高などで富裕層の資産は膨張。輸出大企業には円安の恩恵で過去最高益の大もうけをもたらし経済格差を広げました。
■大企業優遇の投資
高市氏は、アベノミクスの第3の矢を「大胆な危機管理投資・成長投資」に変えるとしています。インフレ目標2%達成までは時限的にプライマリーバランス(基礎的財政収支)規律を凍結して、「戦略的な」財政出動を優先するとします。所信表明演説で「責任ある積極財政」を強調し、人工知能(AI)・半導体、造船、量子、バイオ、航空宇宙、サイバーセキュリティー分野などへの投資を特筆。4日、「日本成長戦略本部」の初会合で、これら17分野を重点投資対象とする成長戦略を策定するとしました。
大企業がもうかればやがて国民に滴り落ち経済成長するという、この30年で破綻が明らかになったやり方を繰り返すものです。日本経済の低迷をさらに長引かせます。
「積極財政」といっても、社会保障など暮らしの予算は削減します。医療費年4兆円削減を決めた自民・公明・維新の3党合意を踏まえ、薬の保険外しや11万床の病床削減も掲げます。消費税の減税・廃止もやる気はありません。
日本経済と国民の暮らし向上のために、国民に苦難を与えたアベノミクスから決別すべきです。








