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2025年10月21日(火)

民主主義への“宣戦布告” 定数削減 自維が合意

グラフ

 自民党と日本維新の会は20日、連立政権の樹立で基本合意しました。衆院議員の定数1割削減を柱とした連立合意は、戦後民主主義を根底から破壊しかねない危険性をはらんでいます。民主主義を守るため、すべての人が立ち上がり、声をあげる時です。

少ない日本の国会議員

 「国会議員の定数が多すぎる。議員定数の大幅削減を絶対やるべきだ」。17日、自民・維新政策協議に先立って、民放番組に出演した維新の吉村洋文代表はこう主張しました。吉村氏が「一丁目一番地」に挙げた議員定数削減は、民主主義の土台を掘り崩す“宣戦布告”にほかなりません。

 そもそも、「国会議員が多い」という吉村氏の認識が間違っています。日本の国会議員定数は100万人当たり5・6人と、経済協力開発機構(OECD)加盟国38カ国中36番目の水準です。イギリスと比べても4分の1程度にすぎません。今でも少ない日本の国会議員の定数を削減すればさらに国民の声が国会に届きにくくなってしまいます。

 維新の本当の狙いは比例定数の削減です。吉村氏が「基本衆議院。1割、50人ぐらい削減したい」「僕は(削減するのは)ここ(比例代表)じゃないかと思う」(17日)とあけすけに語っています。衆院の場合、定数465のうち小選挙区が289、比例代表が176あります。仮に、吉村氏がいうように議員定数の1割を削減した場合、比例代表は120台まで削られることになります。

 小選挙区は各選挙区で最大得票の候補者1人しか当選できないため、それ以外の候補者の得票は議席に結びつかない「死票」となります。一方、比例代表は、票数に応じて定数内で政党候補者の当選人数が決まるため民意が正確に反映されます。比例代表の削減は、小選挙区が持つゆがみをさらに拡大させ、少数意見の切り捨てにつながります。

 議員定数削減の提起の仕方も民主主義を軽視しています。いま衆院では各会派の代表で構成する「衆議院選挙制度に関する協議会」で議論を続けています。その議論を踏まえることなく、いきなり与党の合意だけで議員定数削減を強行するなど論外としかいいようがありません。

企業・団体献金は温存

 維新は今回の連立の「絶対条件」として「国会議員の定数削減」などを持ち出しましたが、自民党との政策的隔たりを隠すための論点そらしにすぎません。維新はこれまで、企業・団体献金の禁止を「政治改革の柱」として主張してきました。しかし、自民党が応じないとみるや、あっさりと棚上げしました。理念よりも政権入りを優先する姿勢は、民意を置き去りにした最悪の党利党略です。

 「合意した政策を日本再起のために成し遂げていくという覚悟をもって、パートナーとして歩む。そういうちぎりを交わしたい」―。維新の藤田文武共同代表は20日の会見で連立合意の意義を強調しました。

 しかし、両党が交わした連立合意文書では、企業・団体献金の禁止については「高市総裁の任期中に結論を得る」と明記しただけで、実現の担保はありません。「政治とカネ」の問題を温存する内容です。さらに、国民生活に直結する消費税減税も「検討」とし、真に国民が求める課題はことごとく先送りされました。

 今回の連立協議では、維新の吉村氏は当初から「副首都」構想と社会保険料の引き下げを「2本柱」に掲げ、企業・団体献金の禁止を「絶対条件」にすることを放棄しました。そして協議が進む中で、突如として「政治改革の一丁目一番地は国会議員の定数削減だ」と言い出したのです。改革の看板を次々に差し替える姿勢は、権力に寄り添うための便宜と打算に満ちています。

 自公政権が衆参両院で少数に追い込まれ、公明党が連立を離脱した最大の要因は、自民党の派閥裏金事件です。国民の強い批判を受けてなお、企業・団体献金を温存しようとする自民党に対し、維新が連立参加と引き換えにその立場を追認したことは、政治改革の旗を自ら降ろしたに等しいと言わざるを得ません。

弾圧立法狙い福祉削る

 大阪維新の会は2011年に大阪府議会で単独過半数を獲得して以降、定数を109から79まで削減し、独裁状態が続いています。この間、カジノ誘致、大阪市つぶしの「都構想」、全国一高い国保料の押し付けなど、異次元の悪政を推進してきました。今後は、これを国全体に推し進めようとしています。

 議員定数削減の先に待っているのは、「スパイ防止法」で国民の口を封じ、「社会保障改悪」で国民の命に関わる予算を大幅削減して、戦争する国づくりへの体制を整備する改憲の道です。

 高市氏は総裁選で「スパイ防止法の制定に着手」と公約。維新も「スパイ防止法を結党時から掲げ、今も公約している唯一の政党」(青柳仁士衆院議員)とウリにするほど成立に躍起。国民民主や参政党も同法制定を呼びかけています。

 「スパイ防止法」は、1985年に自民党が国会に提出しましたが、「国民の目、耳、口をふさぐ悪法」だとして廃案に追い込まれるなど、戦前の治安維持法を彷彿(ほうふつ)とする国民弾圧立法です。

 各党は“日本はスパイ天国”であるかのように描きますが、政府自身が8月15日に「『各国の諜報(ちょうほう)活動が非常にしやすいスパイ天国であり、スパイ活動は事実上野放しで抑止力が全くない国家である』とは考えていない」とする答弁書を閣議決定しており、立法事実が存在しません。

 医療機関の経営が深刻なのに、自民・維新は真逆のことをやろうとしています。

 社会保障を巡り、維新は高市氏に「通常国会で締結した『3党合意』を確実に履行」を迫っています。その内容は、医療費の年4兆円削減を念頭に、OTC類似薬(市販薬と同等の効果がある処方薬)の保険外しや病床11万床の削減です。

 高市氏は、故・安倍晋三元首相の遺志継承を掲げてきた改憲タカ派の中心人物として、総裁選でも「自衛隊の存在を憲法にきちんと書き込む」などと改憲に強い執念を示しています。維新も「21世紀の国防構想と憲法改正」と題した提言で、「戦力不保持」を定めた9条2項の削除や、「国防軍」「軍事裁判所」の創設を明記しています。

 戦争準備のための予算は聖域扱いし、国民の命に直結する社会保障は削減する―こんな政治を許さないために、支持政党の枠を超えた国民的大運動ではね返すことが急務です。

◎自民・維新が合意した政策

【社会保障政策】
・医療費の年4兆円を念頭にOTC類似薬の保険外しや病床11万床削減

【改憲】
・9条改悪に関する両党の条文起草協議会設置
・緊急事態条項に関する条文案の国会提出

【外交安保】
・敵基地攻撃能力を持つ長射程ミサイル整備
・武器輸出の拡大

【インテリジェンス政策】
・日本版CIA「対外情報庁」の設置
・インテリジェンス・スパイ防止法関連法制の制定

【エネルギー】
・原発再稼働の推進

【外国人政策】
・外国人総量規制を含む人口戦略策定
・外国人に関する制度の誤用、濫用(らんよう)、悪用への対応強化

【統治機構】
・副首都機能の整備に係る法案を制定

【政治改革】
・政党法の制定
・衆院議員定数削減(1割削減が目標)


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