2025年10月16日(木)
主張
アイヌ施策推進法
先住民の権利回復へ見直しを
2007年の「先住民族の権利に関する国連宣言」以来、先住民族の権利回復が国際的な流れとなっています。日本でも19年、初めてアイヌを「先住民族」とした「アイヌ施策推進法」が成立しました。
施行5年後に施行状況を検討するとした見直し規定に従って、アイヌ団体や個人の意見・要望に寄り添い、国連宣言に沿った国内対策を充実させる必要があります。
日本共産党は24年の第29回党大会決定で、同法について「アイヌの権利擁護、生活向上のたたかいにつながるものだが、政府のアイヌ民族への謝罪がなく、先住民族の権利(自決権、土地権、生業〈なりわい〉の権利など)の規定がないなど、国際水準にてらし弱点を残している」と指摘しています。
党「先住民(アイヌ)の権利委員会」責任者・紙智子前参院議員の国会論戦や、はたやま和也元衆院議員を中心にした党北海道委員会によるアイヌ民族との対話やシンポジウムの開催などを通じて同法の課題を明らかにしてきました。
■同化政策の謝罪は
アイヌ民族は明治維新前から北海道、樺太などで生活し、独自な言語、文化、風習などを持ちます。江戸時代は、蝦夷(えぞ)=アイヌ=が居住する地域は「蝦夷地」と呼ばれ、1万7千~2万人が暮らしていたと推計されます。
明治政府は明治2年(1869年)、蝦夷地を「北海道」と改称し日本国に編入。それ以来“内国植民地”として北海道開拓に伴ってアイヌの権利を侵害し、生活を破壊する強制移住と日本語の強制など同化政策を進めました。日本政府は同化政策を謝罪し、権利の回復について、アイヌ団体が参加する仕組みのなかで真摯(しんし)に協議すべきです。
アイヌの遺骨を研究目的と称し盗掘した問題は、大きな負の遺産です。同法施行と同時に、北海道白老町に建てられた国立の「民族共生象徴空間」(ウポポイ)の「慰霊施設」には10月6日現在、全国9大学や10博物館などが収集した1639人のアイヌの遺骨が再集約されています。「『人は土から生まれて土に還(かえ)る』との教えなのに、建物に収められ、尊厳はない」との批判が出ています。アイヌの意向に沿った解決が求められます。
■当事者参加が重要
「ウポポイはアイヌの歴史や文化、言語を学び伝える場所です。互いを認め合い、差別のない共生社会を築くために活動しています。母語のアイヌ語の復興が特別に大事です」とアイヌ民族文化財団の村木美幸本部長が語るように、その充実が求められます。
同法では、各市町村が「アイヌ施策推進地域計画」を作成し、国が8割を補助する交付金制度が創設されました。アイヌ民族が参加し、その自主性が尊重される地域計画づくりが重要です。
アイヌの集落・二風谷(にぶたに)コタンがあった平取(びらとり)町は9月末「先住民族の参画による環境・景観保全と文化ツーリズム」をテーマにカナダなどから先住民族を招いて「国際先住民族フォーラム」を開きました。こうした取り組みに学び、アイヌ文化の担い手育成なども大切な課題です。








