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2025年10月16日(木)

きょうの潮流

 女性画家のさきがけ三岸節子さんの花の絵にこんな言葉が添えられていました。「私共が営々芸術に流してきた苦しみその量よりも、女であるがために、画壇に、社会に、いどみ流した血汐(ちしお)の方がどれ程多きに過ぎたことでありましょう」▼美術を学ぶ場は限られ、良妻賢母を強いられた戦前。周りから「女がペンキ塗りになるのか」と猛反対されながら、女性画家たちは励まし合い、互いに研さんと発表の場を模索してきました▼東京・世田谷美術館で開催中の「もうひとつの物語―女性美術家たちの100年」は、その道を志して歩んだ彼女たちの作品から、それぞれの生き方が伝わってきます。戦後も性別役割に束縛され、男性中心の画壇で女性らしさが作品に求められるなか、偏見を打ち破り解放されていく姿を▼「くらしのなかのジェンダー」を本紙で紹介する美術史家の吉良智子さんは、近代日本の女性芸術家が少ないことについて教育機会の不平等や否定的な社会のためだといいます。「歴史を見つめ直すことは、私たちのよりよき未来を探す手がかりになる」と▼1世紀をたどる展示からは従来の美術の物語ではない存在を見いだすことができるとしています。ダイナミックな構成や性別を問わずに訴えかける普遍性が表れた作品の数々に▼いま女性芸術家が活躍する場は増えていますが、美術館の展覧会やコレクションで少数派にある状況はなおも続いています。芸術の秋。視点をかえ、もうひとつの物語に心を寄せてみませんか。


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