2025年10月5日(日)
自民新総裁に高市氏
物価高騰で国民が苦しむ中で、国会での議論をせずに“政治空白”をもたらした自民党総裁選で、高市早苗前経済安全保障担当相が新総裁に選出されました。高市氏の政策や政治姿勢には、物価高騰や政治とカネへの国民の怒りや不満に応えないばかりか、平和や民主主義を破壊する大軍拡や「スパイ防止法」などに向かう危険があります。
裏金“決着済み”無反省
「信頼される自民党、強い自民党へ」。高市氏は総裁選公約でこう掲げ、「政治資金の透明化を徹底する」としました。
しかし、自民党が参院選大敗について「不信の底流」にあると総括した裏金問題についてはほとんど語らず、不問にふす姿勢に終始しました。総裁選中に出演したテレビの討論番組では「裏金問題の決着はついたと思う人は手をあげて」と問われて挙手。無反省ぶりを示しました。
4日に総裁に選出された直後には「全員参加で頑張んなきゃ立て直せませんよ。全員に働いていただきます」とあいさつしました。総裁選中には、裏金議員について「たくさんの処分も行われ、選挙の審判も受けている。全員活躍、全世代、その力を総結集する党運営だ。適材適所で力を発揮していただきたい」(9月23日)と主張しました。「全員参加」を強調し、裏金議員の要職起用も否定しない立場を示しています。
自民党派閥の裏金事件は、企業・団体によるパーティー券購入という「抜け穴」をふさぐことなしに再発を防ぐことはできません。企業・団体献金の全面禁止が問われます。
しかし、高市氏は「企業にも政治参加の権利がある」と主張。企業・団体献金は「禁止より公開」とする自民党の方針と同じ立場を示しただけでした。
裏金事件の公判が進展し、旧安倍派元会計責任者の新証言が出るなど、国会で関係者を証人喚問する必要性が高まるなか、真相解明にも企業・団体献金禁止にも背を向けています。高市新総裁では、金権腐敗が二度と起きない土壌を整えていくことは不可能です。
「消費税減税」取り下げ
今月1日から値上げとなった食料品は3000品目超に上ります。物価高騰が人々の生活をいっそう追い詰めるなか、暮らしを守る対策が急務です。
高市氏は総裁選で、「給付付き税額控除の制度設計に着手」「年収の壁引き上げ」など野党との連携を意識した対策を主張しました。しかし、参院選で多くの有権者が求めたにもかかわらず、取り下げてしまったのが「消費税減税」の政策です。
高市氏は参院選前には食料品にかかる消費税0%を主張していました。しかし総裁選では「物価高対策に即効性はない」「党の大勢の意見にはならなかった」などと発言。党内の合意が得られないとして、多くの人が求める消費税減税を取り下げてしまう―自民党の中で総裁が代わっても、暮らしを守る対策は打ち出せないことが浮き彫りになりました。
「失われた30年」といわれる長期の経済停滞と暮らしの困難をもたらした自民党政治を変えられるのかも問われます。
しかし高市氏は総裁選で、「大胆な危機管理投資と成長投資」で「強い経済」を実現するなどと主張。「経済安全保障に不可欠な成長分野に、大胆な投資促進税制を適用」「勝ち筋となる産業分野に、戦略的支援を行う」などとし、特定の大企業への支援や投資をさらに拡大しようとしています。
一方、労働時間規制について、「心身の健康維持と従業者の選択を前提に緩和」すると公約。財界・大企業の要求にそって、働く人の命と健康を守るための労働時間規制を破壊しようという主張です。
財界・大企業の利益最優先の行き詰まった自民党政治を変えるどころか、ますます突き進む―。高市新総裁のもとでのさらなる経済・暮らし破壊の道を食い止めることが必要です。
米言いなり大軍拡推進
パレスチナ・ガザでのイスラエルの無法を擁護し、イランの核施設を空爆するなど、トランプ米政権が世界の平和秩序を根底から壊す勝手放題を続けているなか、アメリカいいなりの大軍拡を続けていいのかは日本が直面する大問題です。
しかし、日米同盟を「血の同盟」とした故安倍晋三元首相の遺志継承をうたってきた高市氏は、総裁選で「同盟国・同志国との連携強化」を主張し、日米同盟絶対の姿勢を堅持。「新たな戦争の態様(宇宙・サイバー・電磁波領域、無人機、極超音速兵器等)にも対応できる国防体制を構築する」として、大軍拡を宣言しました。
トランプ米政権が国内総生産(GDP)比3・5%を要求する軍事費についても「最新鋭の兵器も備え、スタンドオフ能力(敵基地攻撃能力)も持つ。ここにかかる費用をしっかりと積み上げて、3・5%より高くなるかもしれないが対応していく」と強調。GDP比3・5%の軍事費は21兆円という途方もない金額です。高市氏は、これをさらに上回ることを否定していません。
その先にあるのは、集団的自衛権行使容認と安保法制強行、敵基地攻撃能力保有、長射程ミサイル配備による軍事要塞(ようさい)化など、第2次安倍政権から石破政権に至るまで進められてきた米軍と一体の「戦争国家づくり」のいっそうの強化です。
日米両政府が中国を念頭に置いた敵基地攻撃態勢づくりを進めるなか、高市氏は「台湾有事は日本有事、これは間違いない」と主張。アメリカの対中戦争へ参戦し、日本全土が戦場となる危険を高めることになりかねません。
際限の無い大軍拡は、国民生活を脅かします。日米同盟絶対・「戦争国家づくり」の自民党政治を終わらせ、憲法9条をいかした平和外交への転換が求められます。
「スパイ防止法」急先鋒
参院選であおり立てられた極右・排外主義の潮流。総裁選ではこれに対抗するのではなく、外国人政策の厳格化など排外主義的な政策が競われる異様な状況になり、高市氏は、最も強硬な姿勢を示しました。
高市氏は明確な根拠を示さずに「奈良の鹿を足で蹴り上げるとんでもない人がいる」などと外国人への憎悪をあおりました。「経済目的で難民を装って来られる方々にはお帰りをいただく」「文化や何もかもが違う人たちをまとめて入れていく政策は考え直す」「外国人との付き合い方をゼロベースで考える」などと述べ、「必要な課題を洗い出し、解決をするための法整備まで進められる司令塔をつくる」としました。
危険なのは、他の極右・排外主義勢力との連携により、差別・排外主義が助長されることです。
日本維新の会は「外国人政策及び『移民問題』に関する政策提言」を出し、外国人人口の抑制や「実効性ある強制送還体制」構築などを主張しています。外国人による土地購入や生活保護利用などの制度の厳格化などを主張している参政党は「外国人問題対策」プロジェクトチームを設置。国民民主党は「外国人に対して適用される諸制度の運用の適正化」「外国人土地取得規制」などを訴えています。
これらの勢力はそろって「外国勢力」という“敵”をつくり出して国民を監視する「スパイ防止法」の制定を主張。高市氏は、「スパイ防止法」制定などを盛り込んだ提言の政府への提出を主導するなど、自民党内で「スパイ防止法」推進の急先鋒(きゅうせんぽう)です。
危険な逆流が持ち込まれようとする中、差別や排外主義を許さない国民的な共同で、反動的な動きを打ち破ることが求められます。








