2025年10月5日(日)
自民新総裁に高市氏
改憲・排外主義“右共鳴”の恐れ
「反動ブロック」増す危険
4日の自民党総裁選で、高市早苗前経済安全保障担当相が新総裁に選ばれました。高市氏は選出後のあいさつで「自民党を気合の入った明るい党にしていく。多くの方の不安を希望に変える党にしていく」などと表明。しかし、今回の総裁選では、いずれの候補からも行き詰まった自民党政治を打開する方策は示されず、むしろ、これまでの政治路線を踏襲する横並びの発言が続きました。高市氏をはじめ、自民党に政治を変える展望はありません。
「これからの自民党、男性も女性も全世代の総力を結集して立て直す」―。高市氏がこう主張したように、衆参両院で自公政権が少数与党に転落する中で行われた総裁選は「解党的出直し」「#変われ自民党」をキャッチフレーズに掲げ、自民党政治をどう転換するかが焦点となりました。
一方で、立候補したのは昨年と同じ顔ぶれです。政策論争も内政から外交にいたるまで、各候補の主張に大きな違いはなく、新味や刷新感はありません。国民からも「総裁選は自民党というだけで期待できない」「総裁選の報道をしすぎだ。1年前にやったばかりなのに」と冷ややかな声が相次ぎました。
自民党は綱領で、多様な意見を包摂する「国民政党」であることを掲げています。そのため総裁選は「党内における疑似的な政権交代」とされ、候補者同士の論争を通じて国民に“政策の選択肢”を示す場とされてきました。
ところが、今回は各候補が持論を「封印」し、「党内融和」を優先する内向きの論戦に終始。高市氏は食料品の消費税率ゼロを主張していましたが、「党の大勢の意見にはならなかった」と早々に主張を翻しました。意見をたたかわせる姿勢さえ示せない各候補の態度には、自民党の末期的状況が映し出されています。
また、物価高騰対策など喫緊の課題が山積する中で、党内抗争にすぎない総裁選を延々と引き延ばし、結果として政治空白をつくった責任も重いといわざるを得ません。
行き詰まった自民党が今後、延命のために打つ手は、他党の取り込みです。高市氏は連立拡大について「首相指名までにできるよう精いっぱいの努力をしたい」と明言。早期に安定基盤を築く狙いです。
他方で高市氏は、安倍晋三元首相の遺志継承を掲げてきた改憲タカ派の中心人物です。総裁選でも「自衛隊の存在を憲法にきちんと書き込む」などと引き続き改憲に強い執念を示すとともに、公約には「スパイ防止法」の制定を明記。高市氏が新総裁となるもとで、改憲や排外主義を掲げる野党との危険な“右共鳴”の連携が生まれるおそれがあります。
また、選択的夫婦別姓反対の急先鋒(きゅうせんぽう)でもあり、総裁選でも「旧姓の通称使用拡大」を主張。“女性初の首相誕生の見通し”と取り沙汰されていますが、かえってジェンダー平等が後退する危険もあります。
選挙で国民が下した審判は自民党政治の抜本的転換です。自民党政治を延命し、日本の政治をより深刻な逆行へと導く「反動ブロック」の形成を許すわけにはいきません。いまこそ、これに対抗する新しい国民的・民主的共同を広げることが求められます。(中野侃)








