2025年10月2日(木)
クルド人への差別激化
属性で攻撃はヘイト
在留資格と安定が共生の前提
埼玉
埼玉県で2000~3000人といわれるトルコ国籍の在日クルド人への差別が激しくなっています。偽情報も含めたネット上の拡散で差別が広がり、集住している川口市と蕨市のクルド人は疲れや不安を訴え、支援活動にも影響しています。(小梶花恵)
![]() (写真)「売国奴」などと落書きされた解体現場(在日クルド人と共に提供、一部加工) ![]() (写真)外国人に無関心だった人による差別の顕在化を指摘する温井立央さん |
2024年以降、支援団体「在日クルド人と共に」の事務所にメールや手紙が届いています。「川口市で暴動がありました。クルド人はとても暴力的で、市民は安心して暮らせません」「不法滞在のクルド人はトルコに帰れ」「ちうゴくじンもくるどじんキらい ころスアるよ」
手紙の消印は県外。同会の温井立央さんは、「どれも匿名。中国人のふりまでしている」と言います。県外からの電話では、SNSに影響されて自分もクルド人から何かされるという不安を訴えてきました。
議員まで差別助長
温井さんによると、クルド人が排斥デモに「日本人死ね」と発言したとの誤った情報がきっかけとなり、ヘイトスピーチが激化しました。川口市議会では、自民党の複数の議員が議会で外国人の犯罪行為やゴミ出し、騒音のトラブルを取り上げ、「外国人が増えすぎ、川口市の負担が大きい」などと述べています。
温井さんは「一部のクルド人に犯罪行為やトラブルがあったのは事実です。しかし多くのクルド人は静かに暮らしており、議員までが外国人を取り締まりの対象のように言うことは、差別を助長するものです」と批判します。
7月の参院選では複数の政党が外国人の権利を制限する公約を掲げました。同じ頃、クルド人が営む解体業の現場に「クルド人に死を」と書かれ、蕨市の公園でクルド人の子どもが日本人の男性に殴られる事件が起きました。「本人の行いが責められるのは仕方ないが、クルド人という属性で攻撃すれば、子どもたちまでヘイトの対象になる」と温井さんは訴えます。
権利なく義務強要
在日クルド人には在留資格のない人が多く存在します。トルコ政府に弾圧されているクルド人は、来日すると難民認定を申請しますが、これまで認定された人は全国で1人です。申請を却下された人は仮放免(一時的に収容を解かれる)身分となり、社会的に存在しないも同然となります。就労が禁止され、困難な生活を強いられます。仮放免の保護者が子どもの児童手当を求めに役所を訪ねると、「いないことになっている」と言われたこともあります。
政府が5月に「不法滞在者ゼロプラン」を公表後、仮放免のクルド人が次々と強制送還されています。日本語しか話せない子どもや、大学進学を検討していた高校生なども含まれ、広がった差別と相まってクルド人は恐怖に陥っています。
「勉強しても就職できず、将来の展望がなければ地域に帰属できない。権利がないのに義務だけ言われても、難しい」と温井さんは指摘し、在留資格と安定した生活が共生の前提だと強調します。
川口市議会は9月30日、「不法滞在者ゼロプランの着実な実行等を求める意見書」を自民党、公明党などの賛成で可決。日本共産党、立憲民主党系会派は「国籍・人種による差別を助長する」と反対しました。










