2025年9月30日(火)
世界の軍拡 憲章逸脱
国連報告書 日本にも言及
「飢餓・医療・教育・温暖化…優先順位調整し直せ」
![]() (写真)F35戦闘機の飛行12分で排出されるガスは平均的なガソリン車1年分の排出量と同じ(国連報告書から) |
国連はこのほど、「持続可能で平和な未来のために世界の軍事支出の再調整を」と題した報告書を公表しました。国連加盟国に対し、軍事費と、飢餓・医療・教育・地球温暖化といった分野との支出の優先順位を調整し直すよう要求。日本の大軍拡にもふれています。
9日付で公表された報告書の報道発表は、世界全体の軍事支出が2023~24年のわずか1年で9%増加し、「国連憲章の原則から危険なほどに逸脱している」と指摘。国連のグテレス事務総長は公表にあたり、「過剰な軍事支出は平和を保証しない。軍拡競争を助長し、不信を深め、安定の基盤そのものから財源を転用することで、往々にして平和を損なう」と述べています。
報告書で注目されるのは、日本の大軍拡への言及です。各国の軍事費が増える要因の一つとして、人工知能(AI)をはじめとした新技術が出現する中、「軍が近代化の圧力を受けている」と指摘。日本が極超音速兵器に対応するための「ミサイル防衛」などに約36億ドル(約5400億円)を投資したことをあげています。
また、「兵器産業の自立化」にも言及。長期的なインフラ整備が必要であり、軍事支出に「さらなる上昇圧力をもたらす」としています。日本政府は長射程ミサイルなどの「国産化」に踏み込み、軍事費の大幅増をもたらしています。
▽2030年までに飢餓に終止符を打つために年間で必要な額(930億ドル)は、世界の総軍事支出2・7兆ドルの4%弱▽10%強で、すべての子どもがワクチン接種可能▽5兆ドルあれば、低所得国・下位中所得国のすべての子どもに質の高い教育を12年間提供可能―としています。
また、軍事支出を正当化するために「雇用効果」が持ち出されますが、報告書は「軍事支出10億ドルは軍で約1万1200人の雇用を生むが、教育に支出すれば2万6700人、医療なら1万7200人の雇用を創出する」としています。
地球温暖化を巡っても、「軍事に1ドルを費やした場合、民間部門に1ドルを支出した場合と比べ、温室効果ガスの排出量が2倍になる」と指摘しています。
世界的な軍拡競争が加速する中、憲法9条を持つ日本政府がやるべきは、大軍拡の悪循環を加速することでなく、国連憲章に根ざした、医療や教育、食料など「人間の安全保障」に予算の優先順位を切り替えるよう訴えることです。









