しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2025年9月29日(月)

「マイナ救急」10月1日から全国拡大

地獄の沙汰も「マイナ保険証」次第?

写真

(写真)マイナ保険証を携行するよう呼びかける消防庁の「マイナ救急」PR映像(消防庁HPより)

 119番で駆けつけた救急隊員が「マイナ保険証」で患者の処方薬などの医療情報を確認できる「マイナ救急」の実証事業が10月1日から全国に拡大します。政府は一刻を争う救急搬送を効率化する“メリット”があると強調する一方、さまざまな事情で「マイナ保険証」を持たない患者は置き去り。取得は任意なのに、地獄の沙汰も「マイナ保険証」次第だとしたら大問題です。

 具体的には、119番に通報すると指令員が通報者に「マイナ保険証」の準備を依頼。救急隊が現場に到着したら患者の「マイナ保険証」をカードリーダーで読み込み(顔認証や暗証番号は不要)、タブレット端末で患者の既往歴や薬剤情報などを閲覧します。救急隊はそれらの情報を踏まえて必要な応急処置を実施し、搬送先の病院を選定します。患者が「マイナ保険証」を持っていなかったり、情報閲覧に同意しないと、救急隊は処方薬などの情報を口頭で聴取します。

 消防庁は「マイナ救急」の“メリット”を▽自分の病気や飲んでいる薬を救急隊に正確に伝えることができる▽円滑な搬送先病院の選定や適切な応急処置ができる▽搬送先の病院で治療の事前準備ができる―などと主張しています。

 問題は、こうしたメリットを享受するには「マイナ保険証」が必須だということです。そもそも「マイナ保険証」の取得は任意。しかも「マイナ救急」は資格確認書や従来の健康保険証に対応していません。

 2024年度の実証事業は67消防本部660隊で実施。期間中に救急搬送は全体で15万9492件あり、このうち「マイナ保険証」を活用した情報閲覧は1万1398件、7・1%しかありませんでした。情報閲覧しなかった理由として最多は「マイナンバーカードの不所持」(73・8%)、続いて「保険証の利用登録をしていなかった」(13・8%)でした。

 マイナンバーカードの交付数は1億枚を超え、8500万人が保険証としての利用を登録していますが、個人情報をずさんに扱う政府への不信感などもあって財布などに入れて常時所持している国民は少ないことがうかがえます。

 患者の本人確認には顔認証や暗証番号ではなく、救急隊が目視で実施。情報閲覧の同意は口頭で行います。受診歴など機微な個人情報を閲覧するには本人同意が不可欠ですが、意識障害など同意の確認が困難な時は同意不要としています。

 患者が「マイナ保険証」を所持しているかどうか分からない場合、「マイナ救急」は実施できません。救急隊が所持品確認を行うには法的根拠がなく、消防庁は「慎重に検討する」としています。

 さらに、「マイナ救急」はスマートフォン搭載の「マイナ保険証」には対応していません。(森糸信)


pageup