2025年9月28日(日)
主張
安全な中絶の日
出産強制社会への抵抗の証し
9月28日はセーフ・アボーション・デー(安全な中絶の日)です。奴隷制の時代、奴隷を増やすために子どもを産むことを強制されてきた女性たちが、命を落とすほど危険な方法であっても中絶という方法で抵抗しました。出産を強制される社会に抵抗し闘ったのです。
女性たちの長年の闘いが「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖の健康と権利)」という考え方を確立させてきました。
中絶の制限は女性たちの命にかかわる問題です。どんな事情でも中絶が禁止されているエルサルバドルでは、妊娠を知って自殺する18歳未満の女性の数が、妊産婦死亡の約40%にのぼっています。
■極右政権が脅かす
かつて日本も、戦争のために「健康な男児」を産むことが求められた社会でした。「産めよ増やせよ」を推進し、女性に5人以上産むことを奨励しました。
ナチ体制下のドイツでは、政権に都合のいい遺伝子を産ませるために女性に出産を奨励し、福祉予算を削るために「価値の低い」とされた人は男女問わず強制断種(不妊)の犠牲となりました。
女性に出産奨励金を出し4人以上産んだ女性を表彰しました。避妊・中絶を制限し、避妊具が入手できない状況をつくり、女性が労働していることを批判し、母性を強調しました。
近年、欧州を中心に極右政権が台頭するもとで、リプロダクティブ・ヘルス&ライツが脅かされる事態がおきています。排外主義を掲げ外国人を排斥し、民族維持を目的に女性の中絶の権利を制限しています。中絶の制限が強化されたポーランドでは、女性の身体の安全のために必要な時でさえ中絶が受けられず命を落とす事態が起きています。
「産めよ増やせよ」の本質は、権力にとって都合のいい人間を増やすことであり、個人の幸福とは無縁です。世界中にひろがった中絶の権利は、女性たちの「抵抗の証し」であり、長年の運動で勝ち取ってきたものです。
■自己決定の尊重を
日本でも女性たちの運動によって、今年8月には緊急避妊薬が年齢制限をつけず市販化されることになりました。経口中絶薬は2023年4月に認可され、今年9月時点で取り扱い医療機関が46都道府県338カ所にとどまるものの、広がりが期待されます。
24年10月、国連の女性差別撤廃委員会がだした総括所見は、日本に対し「女性の権利、平等および自分の生殖に関する権利について自由に選択するための経済的・身体的自律の完全な実現を確保すること」を求め、中絶の配偶者同意要件の撤廃など7項目を勧告しています。
日本では、世界的に認可されている避妊用インプラントやパッチが認可されていないことや経口中絶薬による処置費用が中絶手術と同様に高額なことも課題です。
妊娠や出産のタイミングを自分で決められてこそ「自分の人生」です。「産むことを強制する勢力」に抵抗し、女性の自己決定を尊重できる社会の実現へともに力を合わせましょう。








