2025年9月21日(日)
主張
アルツハイマーデー
新しい認知症観で支えともに
9月21日は世界アルツハイマーデーです。国際アルツハイマー病協会(ADI)が世界保健機関(WHO)の後援をうけて1994年の国際会議で制定したものです。世界の患者と家族に援助と希望をもたらすことを目的にしています。日本でも認知症についての正しい知識と理解が深まるよう、国が「認知症の日」と定め、9月を「認知症月間」としています。
■自分らしい暮らし
認知症とは、「いろんな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったために、さまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出る状態(およそ6カ月継続)」(厚生労働省政策リポート)を指します。2022年時点で、認知症の高齢者数は約443万人、軽度認知障害の高齢者は約559万人と推計され、高齢者の約3・6人に1人が認知症または予備群といえる状況です。若年性認知症の人は約3・6万人です。
04年に「痴呆(ちほう)」という用語が「認知症」に変更されましたが、現在も、認知症になると何もわからなくなり、できなくなるとの偏見や誤解が残っています。
しかし、認知症になってからも、一人ひとりができること、やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間たちとつながりながら、希望をもって自分らしく暮らし続けることは可能です。
この「新しい認知症観」による実践が全国各地ですすんでいます。夢だった「カヌーづくり」を同じ認知症と診断された人たちと2年がかりでやりとげた「本人グループ山陰ど真ん中とその仲間たち」などは好例です。
当事者団体「認知症の人と家族の会」は全国47都道府県に支部があり、当事者本人、家族、専門職など9千人以上の会員が「認知症になっても安心して暮らせる社会」を目指して、励まし合い、助け合っています。
■共生社会の実現へ
政府は、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(24年1月施行)に基づき、「認知症施策推進基本計画」を策定しました。認知症の人を「支える対象」と見るのではなく尊厳ある個人としてとらえ、個性と能力を十分発揮し、共に支え合って生きる重要性を強調しています。認知症の当事者も参加して策定した「鳥取市認知症施策推進計画」など、具体化に踏み出す動きもあります。
日本認知症本人ワーキンググループ(JDWG)代表理事の山中しのぶさんは「認知症の日」に寄せるメッセージで、自身が19年に若年性アルツハイマー病と診断されて落ち込んだことを振り返りながら、「はじめの一歩を踏み出すのはご自身です。不安や孤独の迷路を脱し、安心して自分らしい道を歩んでいけるよう、必要な情報を伝えたり、つながり、認知症になってからも自分らしく暮らせるまちづくりへのアクションを、一緒にすすめていきましょう」と呼びかけています。
当事者やその家族が地域で尊厳をもって暮らすためにも、公的な介護体制の拡充が不可欠です。政治がその責任を果たすことが切実に求められています。








