2025年9月21日(日)
きょうの潮流
「終戦」になっても終わらない戦争があります。戦場での過酷な体験、被害や加害の行為が原因で心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを患った兵士たちの「心の傷」です▼戦時中は「皇軍に砲弾病(戦争神経症)なし」と隠蔽(いんぺい)され、戦後も「戦争ボケ」といわれ、社会的に封印されてきました。戦後80年の今年、厚労省の施設「しょうけい館」(戦傷病者史料館)で心の傷をテーマにした展示が行われています▼大戦末期4年間の戦病者は785万人で、およそ8%にあたる67万人が「精神病・その他の神経症」だったとの調査結果も。「発症の主要原因は、中国やアジア諸国民への加害行為です」。こう語るのは、「PTSDの日本兵家族会・寄り添う市民の会」を結成した代表の黒井秋夫さんです▼20歳で召集された黒井さんの父親・慶次郎氏は中国・吉林省の独立守備隊に配属。「匪賊(ひぞく)」と呼んだ農民兵らを襲って命と財産を奪い、生活を破壊する残虐な作戦に従事しました。加害行為は満州などで敗戦まで続けられました▼「父は、人の心を失った兵士から本来の自分になろうとした時に、多くの中国人を殺害した体験がトラウマになり発症したと思います」。近所付き合いもしない笑顔のない人で、定職につかず、一家は貧しい暮らしだったといいます▼黒井さんは昨年9月、中国へ謝罪の旅をしました。「中国人民への侵略と蛮行は、人間として許されない所業でした。平和と和解の絆を結び、戦争をしない日本を目指す決意です」








