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2025年9月13日(土)

主張

特区民泊の問題点

住民目線の観光政策へ転換を

 公共交通の混雑、騒音やゴミ、周辺の諸物価の値上がりなど各地でオーバーツーリズム(観光公害)が問題化しています。そのなかで、戸建て住宅やマンションを旅行者の宿泊に供する「民泊」が地域住民との摩擦を生んでいます。

 宿泊営業では原則として旅館業法にもとづく許可が必要です。ただし、2013年に制定された国家戦略特区法により、都道府県知事(保健所)に「特区民泊」と認定された場合や、住宅宿泊事業法(17年成立)により知事に届け出た「新法民泊」は旅館業法の適用を除外され実質的に宿泊業を営むことができます。

■住宅専用地で摩擦

 旅館業法にもとづく施設は住宅専用地域で営業できませんが、それが可能となるため周辺住民から苦情が出る事態となっています。また、衛生管理、保健所の立ち入り検査などの義務も除外されます。

 大阪市では14階建て200室超の新築マンションが丸ごと特区民泊と認定され営業しています。天然温泉付きの事実上のホテルでありながら、本来ホテルの建てられない場所に造られ、民泊運営からの撤退と特区民泊の認定取り消し、制度見直しを求める住民運動が起きています。ホテル・旅館業界も市に特区民泊廃止の要望書を出しました。

 維新府政のもと大阪府は15年に東京都大田区と並んで真っ先に特区民泊を導入しました。同じく維新市政の大阪市は16年から実施、住民の反対の声を押し切って強引な規制緩和に走り、今年6月末時点で全国の特区民泊6899施設の95%が集中しています。

 国家戦略特区法は、安倍晋三政権が「世界で一番ビジネスがしやすい環境」をつくるとして推進。「世界からの投資を惹(ひ)きつける」「国際競争力強化」のために、国家戦略特区を「日本経済社会の風景を変える大胆な規制改革実行の突破口」と位置付けました。

■岩盤規制打破掲げ

 安倍首相(当時)は「岩盤規制の打破」を叫び、「特区」での規制緩和と企業優遇の税制をすすめました。特区民泊も投資目的になっており、住民の追い出しや住環境の悪化を招いています。

 国家戦略特区法に対し、日本共産党は「財界要求優先の規制緩和ありきで、安全・安心が脅かされる側の声が事前に聞かれず悪影響も検証されない。国民の命や暮らし、雇用を守るルールが壊されてはならない」と反対しましたが、自公、民主(当時)、維新などの賛成で成立しました。

 さらに自公政権は観光を「成長戦略」「稼ぐ力」の柱と位置づけ、「観光立国推進基本計画」(23年)などでインバウンド優先の観光政策を推進しています。これがオーバーツーリズムを引き起こし、地域住民の生活と安全を脅かすとともに、外国人への排斥感情の一因ともなっています。

 観光を通じ国際相互理解が進むことは歓迎すべきことです。しかし、「インバウンドで稼ぐ」ことを最優先し住民の生活や自然などを犠牲にする政策、住民合意のない施策は見直すべきです。

 インバウンド頼みの姿勢を改め、地域住民の目線に立った持続可能な観光政策への転換が求められています。


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