2025年9月12日(金)
イスラエルのカタール攻撃
停戦プロセスの破壊許されない
イスラエル軍は9日、カタールの首都ドーハに攻撃をおこない、イスラエルとの停戦交渉のために滞在していたハマスの幹部ら6人を殺害しました。
カタールは、ハマスとイスラエルの停戦に向けた仲介工作をエジプトとともに担ってきた国です。攻撃対象となった住宅ではハマス幹部らが米国の新停戦案について協議しているところだったと報じられています。
今回の攻撃は、主権国家の領土保全をはじめ国連憲章に明記された諸原則をあからさまに蹂躙(じゅうりん)するものです。それだけではありません。紛争解決の手段はどのような状況下でも確保するという国際慣例を踏みにじり、交渉団長の暗殺など、停戦プロセスそのものの破壊をねらった暴挙であり、断じて許すわけにいきません。
国際社会からは、「カタールの主権と領土保全に対する露骨な侵害」(グテレス国連事務総長)、「この攻撃は調停努力を損ない、地域の安定を脅かす」(エジプト政府)など、厳しい批判の声があがっているのは当然です。
権力維持に固執
イスラエルはこれまでも、イラン、レバノン、シリアなど脅威とみなす国に国際法違反の一方的攻撃をおこなってきました。しかし今回の攻撃は、和平への希望そのものを打ち砕くものです。そこにはガザでジェノサイドをあくまで強行するねらいがあります。
なぜイスラエルはこれほどの暴挙をおこなうのか。
ネタニヤフ首相はこれまでは、ガザ地区全体を制圧する意図を明言する一方、停戦交渉にも応じる姿勢を見せてきました。
一線を越えたネタニヤフ首相についてドイツの公共テレビARDは、「羊の皮を置いてきた狼」と指摘し、みずからの権力維持にきゅうきゅうとする姿勢をあらわにしたと評しました(9日付)。
ネタニヤフ政権は国会での議席が野党と同数の「少数内閣」。閣内には、ガザへの入植やパレスチナ人のガザ以外への追放を主張し、停戦交渉に強硬に反対する極右政党を抱えています。彼らは「戦争が交渉で終わるようなことになれば、政権から完全に離脱する」との脅しを繰り返しかけています。彼らの政権離脱を許せば解散・総選挙となり、ネタニヤフ首相は権力を失う可能性が高い。人質やパレスチナ人の命よりも、自らの権力維持を最優先したのが、今回の行動だといえるでしょう。
具体的行動こそ
日本政府は、今回の攻撃について「外交努力を妨げ、カタールの主権と安全、ひいては地域の安定を脅かすものであり、わが国として強く非難」するという岩屋外相の談話を出しました。
しかし、世界中でパレスチナ国家の承認に踏み切る国が急増する中、日本はドイツとともに依然として「国家承認はプロセスの最後の段階」という主張に固執しています。また、国連総会決議がよびかけている対イスラエル制裁に応じず、イスラエルからの武器購入に意欲を見せています。
イスラエルのジェノサイドを押しとどめるために、日本は、米国に対して対イスラエル軍事・政治支援を止めるよう迫るとともに、実効性のある具体的措置にただちに踏み切るべきです。(小島良一・国際委員会委員)








