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2025年9月10日(水)

主張

保護費減額は違法

国は最高裁判決に従い謝罪を

 国・厚生労働省による2013年からの生活保護基準大幅引き下げは違法だと、最高裁判所が下した原告勝訴、国敗訴の画期的な判決(6月27日)から2カ月。福岡資麿厚労相は謝罪すらしていません。敗訴当事者・厚生労働省は、勝訴当事者が反対したにもかかわらず「最高裁判決への対応に関する専門委員会」を省内に強行設置しました。厚労省が選んだ専門委員が最高裁判決の内容を精査して対応を決めるという不誠実極まる異常な姿勢に出ています。

 引き下げは違法と訴えた原告と「いのちのとりで裁判全国アクション」などは最高裁判決当日、福岡厚労相にたいし、早期全面解決として真摯(しんし)な謝罪と13年改定前基準との差額保護費の遡及(そきゅう)支給などを求めました。専門委員会設置は、12年間にわたる全国31の訴訟を無いものとし、国民の権利と自由を保障する三権分立を揺るがすような前代未聞なことです。しかも、「専門委員会の結論時期は未定」(同省社会・援護局保護課企画法令係長)という無責任なものです。

■第三者の検討委を

 「国民生活の保障及び向上」等を図ることを任務とする(厚生労働省設置法3条)厚労省がすべきことは、最高裁判決を真摯に受け止め、勝利した原告・弁護団と協議し、差額保護費の遡及支給など被害回復をただちに行うことです。「専門委員会」というなら、安倍政権下で自民党の選挙公約を忖度(そんたく)するように基準を引き下げた経緯と再発防止策を提言する第三者の検討委員会こそが必要です。

 田村智子委員長をはじめ日本共産党国会議員団は8月19日、最高裁判決を踏まえ厚労省はただちに生活保護利用者に謝罪し、引き下げ分を補償するなど早期全面解決を求める石破茂首相と福岡厚労相への要請書を提出しました。27日には、「いのちのとりで裁判」の原告・弁護団と懇談し、被害回復にむけて意見交換しました。

■国の最低限度保障

 憲法25条に基づき、国民の生存権を守る“最後の砦(とりで)”が生活保護制度です。生活保護利用者は基準が大幅に引き下げられたことで、生活扶助費が平均6・5%減額され、その影響が長期間続いた上に、現在の物価高騰、猛暑等で生活はいっそう困難になり、生存権が侵害され続けています。原告の2割を超える232人が亡くなっています。最高裁判決後にも、猛暑なのにエアコンを設置できない神奈川の原告が亡くなりました。

 また、生活保護の基準額は、「ナショナルミニマム(国の最低限度保障)」を具体化したものとされており、保護を利用する人だけでなく、最低賃金の額、就学援助費の支給基準、地方税の非課税限度額など50近い制度とも連動・関連して多くの人たちの生活に影響を与えています。

 裁判を支えてきた全国生活と健康を守る会連合会(全生連)は「国は生活保護減額違法の判決に従え」を合言葉に、請願署名運動と自治体・議員要請行動を始めています。ナショナルミニマム向上の課題としても、国民的な運動を広げるときです。


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