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2025年9月10日(水)

きょうの潮流

 『週刊新潮』掲載のコラムが外国ルーツの人々への差別と人権侵害にあたると、新潮社に抗議した作家の深沢潮さん。この日本で同時代を生きて作品を愛読する一人として、深沢さんの主張に共鳴します▼問題のコラムは髙山正之氏の連載で「創氏改名2・0」と題して、韓国にルーツのある深沢さんらを標的に〈日本も嫌い、日本人も嫌いは勝手だが、ならばせめて日本名を使うな〉と断じる偏見と悪意に満ちた妄言▼深沢さんは記者会見で、在日コリアンが通称名を使う大きな理由は民族名ではいじめや差別に遭うからだと自身の家族の経験を交えて語り、名前は個人の尊厳と密接に結びついているもので他人が干渉すべきではない、と訴えました▼「ありのままの自分に誇りを持って生きていける、多種多様なルーツや生きざまのひとびとが胸を張って生きていける、そんな国、日本であってほしい」と▼作家渾身(こんしん)の作『翡翠(ひすい)色の海へうたう』は、戦中、朝鮮半島から連行され沖縄で日本軍「慰安婦」にされた女性の生涯を、現代の性暴力や性搾取とつなげて描き切った力作です。慰安所で〈コハル〉と呼ばれ、本当の名前を人間であることの唯一の証しとして心に秘め続けた女性の慟哭(どうこく)。歴史のはざまで〈いなかったことにされてしまう〉人たちに命を吹き込みました▼抗議を受けた連載は打ち切りになったものの、同氏はその後も他誌で同様の持論を展開しています。対立と分断をあおり共生社会を破壊する言説を注視し、声を上げていきたい。


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