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2025年9月8日(月)

きょうの潮流

 あのとき、たしかにふたりはそこにいました。関東大震災の避難民であふれ返る上野公園に。一人は日本共産青年同盟の初代委員長、川合義虎。もう一人は歴史家・半藤一利氏の母、半藤千恵です▼川合は、倒壊した家から救い出した幼児3人とともに。千恵は、被災の混乱のなかで帰宅をあきらめ一夜を過ごすために。もし、ふたりがここで出会っていたら…。史実を基にした創作が広がりました▼「女工哀史」を世に残した細井和喜蔵(わきぞう)の妻トシヲの半生を描いた『不屈のひと』。本欄でも紹介したように「女工哀史」刊行・和喜蔵没後百年にあたる今年、岩波書店から出版されたこの評伝小説には騒乱のさなかの心温まるふたりの姿が生き生きと▼著者の石田陽子さんは、川合と千恵の自宅が近かったこともあり事実をつなぎ合わせた挿話をめぐらせます。半藤一利氏に師事した石田さんは生前、千恵のことを聞き、川合の生涯も検証。どこまで創作にするか悩みましたが、どうしても出会いの場面を▼そこには、人間らしく生きるために闘った労働者や女性たちがいたことを知ってほしい、との強い思いが。そして、あの震災の混乱に乗じ川合ら10人の青年労働者を時の権力が虐殺した歴史のことも▼5日に開催された亀戸事件102年の追悼会。多くの朝鮮人や労働運動家が犠牲になった背景とともに、極右・排外の動きや国民監視が強まる現代に重なる危機感が語られました。先人たちの闘いを受け継ぎ、それを許さない決意を誓いながら。


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