2025年9月7日(日)
主張
自衛隊とインド太平洋
常態化する演習 看過できない
自衛隊が西太平洋地域、東南アジアで各国軍と共同訓練や軍事交流を常態化させています。対中国を念頭においた「自由で開かれたインド太平洋」構想を軍事面から担おうとする行動であり、看過できません。
■陸・海・空にわたり
海上自衛隊は毎年、「いずも」型護衛艦を中心とする部隊を半年以上も長期派遣する「インド太平洋方面派遣」を実施し、十数カ国を訪問、毎月のように西太平洋、東南アジアで各国軍と共同訓練をすすめています。
航空自衛隊は2月、日米豪共同訓練「コープ・ノース」を実施、4月には米比共同訓練にオブザーバー参加、7月にはグアムなどで米軍主催の多国間共同訓練をしています。
陸上自衛隊も5月、米比合同演習に韓国海兵隊とともに参加、8月、日米豪共同指揮所演習を日本で実施、米・インドネシアなどとの統合・共同実動訓練をインドネシアでおこなっています。
これらの共同訓練の目的について、各自衛隊が共通して「自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて連携を強化」をあげているのが特徴です。演習だけでなく、幅広い軍事協力も拡大しています。
自衛隊と外国軍が共同訓練をしやすくする「円滑化協定(RAA)実施法」が4月成立、日本とフィリピンのRAAも6月、承認されました。
「国家安全保障戦略」で設置が決まった政府安全保障能力強化支援(OSA)も本格的に動きだし、今年度はタイ、フィリピン、トンガなど8カ国が対象になり、ドローンや高速警備艇などを供与します。
日本はオーストラリアに護衛艦を共同開発・輸出することを合意しましたが、英国、イタリアと共同開発している次期戦闘機も同国に輸出する交渉を始めています。武器を共通化することで補修拠点の相互利用など運用の柔軟性が高まります。
「自由で開かれたインド太平洋」構想は、安倍晋三首相(当時)が提案したもので、中国を多国間で包囲するねらいを背景としています。この提起以後、インド太平洋での自衛隊と日米豪印を軸に各国軍との共同訓練が激増してきました。
中谷元・防衛相は5月のアジア安全保障会議で、対中国を念頭に東シナ海や南シナ海をはじめインド太平洋地域を「ひとつのオーシャン」(ワン・シアター=戦域)として同盟国・同志国をはじめ各国と連携を発展させる構想を打ち出しています。
しかし、米中対決のなかでアメリカに加担して軍事的対応をすすめることは、アジアで軍事対決の激化をよびおこす危険な道であり、日本が担うべきものではありません。
■平和の外交でこそ
そもそも憲法9条を持つ日本は、侵略戦争の反省に立ち、福田ドクトリン(1977年)で、「わが国は、平和に徹し軍事大国にはならないことを決意し」、その立場から、東南アジアの平和と繁栄に貢献すると約束しているのです。
日本は、包摂的な平和を追求するASEAN(東南アジア諸国連合)と協力し、対話と協力の外交で平和をつくるためにこそ尽力すべきです。








