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2025年8月30日(土)

主張

大震災と朝鮮人虐殺

問われているのは今の日本だ

 「事件の真実を知ることは不幸な歴史をくりかえさず民族差別を無くし人権を尊重し、善隣友好と平和の大道を拓(ひら)く礎になる」(朝鮮人犠牲者追悼碑文)。1923年9月1日の関東大震災直後に発生した朝鮮人虐殺の追悼式典が毎年、同日に開かれます。

 一方で、虐殺の歴史的事実を否定する言動も強まっています。小池百合子都知事は、今年も関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典へ追悼文を送らないとしています。先の戦争を侵略戦争と認めず、外国人を蔑視・排斥する極右・排外主義の潮流も目立っています。

 朝鮮人虐殺とどう向き合うのか―。過去の問題ではなく、今の日本が問われています。

■歴史的事実の隠蔽

 関東大震災直後、朝鮮人数千人が虐殺されたのは明白な史実です。数々の証言、警察の記録、軍隊の資料、裁判記録があります。多くの自治体史にも刻まれ、首相を長とする中央防災会議の災害教訓の継承に関する専門調査会の報告書(2009年)も「虐殺という表現が妥当する例が多かった」と明記しています。

 朝鮮人虐殺は、日本による過酷な植民地支配、三・一独立運動への血の弾圧、これらを通じて形成された民族蔑視、抗日運動への恐怖心、差別がすすむなかで敷かれた戒厳令の下、軍隊、警察、自警団などによって行われたのです。

 しかし小池知事は、虐殺の認識を問われても「歴史家がひもとくもの」と認めません。小池知事が17年に追悼文送付を中止して以後、史実をゆがめ他民族を冒涜(ぼうとく)する団体が毎年、式典と同時刻に隣接した場所でヘイト集会を開くようになりました。知事の態度は歴史的事実の隠蔽(いんぺい)であり、歴史を逆行させるものです。

 朝鮮人虐殺を否定する動きの背景には、政府が虐殺の事実を認めないことがあります。政府は「事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」(松野博一官房長官、23年)と言い続けています。

 しかし、すでに述べたように虐殺の証拠、事実は明らかで、政府は見たくないものを見つからないと言い張っているだけで、恥ずべき態度です。

■政府は責任認めよ

 日本弁護士連合会は03年、「国は、虐殺の被害者、遺族に対し、その責任を認めて謝罪すべきである」とし、虐殺の全貌と真相を調査し、明らかにすべきだと勧告しています。歴史に背を向けてきた政府の責任は重大です。

 23日の日韓首脳会談では、共同の報道発表が出されました。日本が「植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、…痛切な反省と心からのお詫(わ)びを述べた」1998年の共同宣言に言及し、両国関係を発展させていくことを確認しています。大震災時の朝鮮人虐殺の事実を認めない政府の態度はこの精神にまったく反します。政府は、事実と責任を認め遺族に謝罪するとともに、全貌を究明し、真相を明らかにすべきです。

 朝鮮人虐殺以後、排外主義も大きな要因となって、日本が戦争への道を進んだ歴史を繰り返してはなりません。国民一人ひとりが歴史の事実を知り、向き合うことがいま切実に求められています。


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