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2025年8月29日(金)

主張

25年度人事院勧告

物価・民間給与上昇に見劣り

 人事院は、2025年度の国家公務員の月給を3・62%引き上げるよう内閣と国会に勧告しました。4年連続の引き上げ勧告で、3%を超えるのは1991年以来34年ぶりです。昨年は新卒など若年層の引き上げに重点が置かれ高年齢層の引き上げ率は1%台と極端に低くなっていましたが、今年は全年齢層で昨年を上回る水準の引き上げとなりました。民間と公務労働者の連携した闘いの成果です。

 しかし、47カ月連続で上昇する物価に見合わず、実質賃金の減少に歯止めをかけるものにはなっていません。

 5・52%となった今年の民間春闘の結果(厚生労働省調査)と比べても低水準です。民間に見劣りする賃金が国家公務員志望者減の要因の一つとされ、民間と競争力のある給与の実現が課題と強調されていますが、今回の勧告で格差はさらに拡大しました。

■ケア労働者に影響

 原因の一つに、官民の賃金比較調査の対象事業所の規模の問題があります。今回、労働組合の要求や国家公務員志望者減などを受け、国家公務員の給与削減を目的に行われた2006年の制度変更を修正し、民間の比較対象を従業員50人以上から100人以上に戻しました。しかし、民間の賃上げ状況と比べると不十分なのは明らかです。

 医療機関など国の俸給表を参照している事業者は多く、賃上げの目標・目安にしている中小企業も少なくありません。人事院勧告が官民格差を過小に評価していることが、医療・福祉など公的部門に従事するケア労働者や中小企業の給与の引き上げが進まない要因の一つでもあります。

 人事院勧告は国家公務員の労働基本権制約の代償措置として官民格差を是正する制度です。給与格差を正確に反映できない欠陥を放置する人事院の存在意義が問われます。

■長時間労働是正を

 勧告は、昨年に続き公務員応募者数の減少や若年離職の増加など人材確保への危機感を繰り返し表明し、長時間労働是正など解決すべき「根源的な課題」に向き合い、改革を進めるとしました。官民比較の調査対象の企業規模変更もその一つです。

 人事院が若手職員に行ったアンケートで、公務員の魅力向上に必要な取り組みを尋ねたところ、約8割が給与水準の引き上げ、約6割が超過勤務・深夜勤務の縮減を挙げました。勧告も、超過勤務縮減は最大の課題だと述べ、月100時間を超す超過勤務の最小化に不退転の決意で取り組むとしますが、中身は従来の延長線上でしかありません。

 この間、人事院は対策を進めてきましたが、月100時間超の勤務は24年調査では前年より増加し7・7%になりました。2万人を超える国家公務員が過労死ラインを超えて働いているのが現実です。

 国会対応などを理由に容易に過労死ラインを超えた勤務を命じられる枠組みを維持したままでは、長時間労働の抜本是正が進まないのは明らかです。過労死水準を超える超過勤務を禁止するとともに、背景にある過剰な定員「合理化」、総人件費抑制方針を見直し、定員増に転換することが不可欠です。


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