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2025年8月26日(火)

主張

博士支援国籍差別

文科省は誤りを認め撤回せよ

 文部科学省が博士課程の大学院生を支援する「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」で、留学生には生活費を支給しない方針を固めたことに対し、学生や教員らが抗議し撤回を求める声が広がっています。

 博士課程の大学院生は、欧米では研究労働者として位置づけられ、給与が支給されるのが一般的です。ところが日本では「研究者と学生の両面がある」とされ、授業料まで負担しなければなりません。

 SPRINGは、遅れている博士支援を強めようと2021年度から導入され、24年度は約1万人に生活費支援として最大年240万円が支給されていました。留学生が約4割で、そのうち国籍別では中国が最多でした。

■国際化進めたのに

 SNSで「中国人留学生に1千万円支援」などと誇張するデマが拡散され、自民党議員らが“日本の学生支援の原則を明確にすべきだ”と国会質問していました。

 文科省の「生活費支援を日本人に限定」との方針は国籍を理由とした明白な差別です。研究の質や将来性は国籍に左右されません。日本で生まれ育った外国籍学生も排除される危険があります。人権を保障する憲法や国際人権規約の平等原則に反します。

 文科省は、SPRINGの元々の趣旨は日本人の博士課程進学の支援だと説明します。しかし、文科省はこれまで「大学教育の国際化」として留学生の受け入れを推進し、SPRINGの公募要領では「より多様な国・地域、特にASEAN諸国からの受入れ」を強調していました。昨年3月の「博士人材活躍プラン」にも、支援を日本人に限定する方針などありません。

 今回の留学生排除の方針は「日本人ファースト」などという排外主義的外圧に屈した朝令暮改にほかなりません。

 17年末から自民党議員らは「反日学者に科研費を与えるな」と外圧をかけました。当時の文科省は「学術的価値以外の要素によって採否が影響されることはない」とはねのけています。国籍差別は誤りだと認め、撤回すべきです。

■院生支援強化こそ

 問題なのは、修士から博士へ進学する大学院生が10年前と比べ約12%も減っていることです。修士課程の院生が進学ではなく就職を選ぶのは、進学すると経済的に自立できず、博士修了後の就職も見通しが立たず、大学教員の仕事に魅力を感じないからです。

 自民党政府が学費値上げに歯止めをかけず、国立大学への運営費交付金を削減し、私大助成を抑制し、任期制雇用の教員・研究者を増やしたことが原因です。

 23年3月末の「無期転換ルール」適用をさけるための数千人の研究者の大量雇い止めにも文科省はまともな対策を打ちませんでした。自民党議員も文科省も自らの失政にほおかぶりをしています。留学生に不利益を強いるのは筋違いです。

 博士進学を励ますために博士院生を研究者と位置づけ、学費を無償化し、経済的支援を強化するとともに、大学予算増により任期制教員・研究者の雇用を安定化させることこそが求められています。


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