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2025年8月24日(日)

主張

暴力問題と高校野球

事実を究明し今後に生かそう

 暴力にどう向き合うのか問われた夏でした。全国高校野球選手権大会では広陵高(広島)の部内暴力が大きな波紋を広げました。不祥事で大会途中に出場辞退にいたった初のケースで、21日には学校が監督退任を発表しています。

 部員間の暴力がなぜ起き、どんな実態か。指導者のかかわりも含め、事実の究明とともに教訓を導き、広く今後に生かすことが求められます。

 発端は今年1月、野球部の寮で1年生部員がカップ麺を食べたことです。規則を破ったと上級生が胸や頬をたたくなどの暴力を振るいました。学校は事態を日本高校野球連盟に報告。3月、厳重注意として4人の部員が処分を受けていますが、日本高野連の基準で非公開とされました。

 7月にSNS上で暴力問題が明るみに出て、8月には2年前の別の暴力行為の告発が続き、広陵高は出場辞退に追い込まれました。

■被害者は納得せず

 問題は被害者2人が学校と事実認識で食い違い、納得していないことです。ともに警察に被害届を出す深刻な事態です。学校側は最近になり、「調査が不十分だった可能性がある」と認め、再調査を表明しています。同校がいかに不誠実な対応をしてきたかがここに集約されています。

 事態を小さくみせたり、隠したりという意図はなかったか。甲子園に出場する思惑を優先させていなかったか。同校は5人の理事のうちの1人が、野球部の監督でした。学校の経営優先の姿勢の有無も含め、真摯(しんし)な検討が求められます。

 上級生と下級生のゆがんだ関係にメスを入れる必要もあります。上級生が力で支配し、人権すら認めないあり方がいじめや暴力の温床となっている可能性があります。ここでも学校、指導者の姿勢が要です。学校はその後、たった1度の部員アンケートで、いま暴力はないとしていますが、あまりに安易に考えてはいないか。

■話し合う場もって

 日本高野連自身の検証も不可欠です。日本学生野球憲章は「学生野球は、一切の暴力を排除」としていますが、これを現実のものにする努力と体制が十分だったか。いま多くのスポーツ団体は暴力・ハラスメントの相談・通報窓口を設けています。主張が対立する際、窓口の存在と独自調査の権限は決定的です。導入の努力をすべきです。

 憲章は「学生野球は、教育の一環であり、平和で民主的な人類社会の形成者として必要な資質を備えた人間の育成を目的とする」とうたっています。日本高野連は指導者の意識改革や研修を強めることは当然ながら、この理念をどう前進させるかに心を砕いてほしい。提案したいのは、すべての部で選手と監督が話し合う場をもつことです。暴力ではなく、互いの人格や人権を認め、尊重し合える関係づくりのために。それは一度ですむ話ではないかもしれませんが、その過程は明日につながるはずです。

 高校球界の課題は他のスポーツにも共通するものです。広くそのあり方を見つめ直すため、みんなで学び、前に進む夏にしたいものです。


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