2025年8月21日(木)
主張
スパイ防止法
戦前回帰の弾圧立法を許すな
外国人差別を売り物にする排外主義・極右的潮流の危うさが出はじめました。先の参院選で議案提出権を得た参政党は、神谷宗幣代表が選挙後の会見で秋の臨時国会に向け「スパイ防止法案」の提出を目指すと表明しました。神谷氏は「法制局とも相談しながら検討している」「他党との交渉をある程度水面下で始めている」と言います。「スパイ防止」の名で国民監視を強め、取り締まろうという危険な動きです。
■思想差別・排除狙う
スパイ防止法案の具体的な中身は示されていませんが、狙いははっきりしています。
神谷氏は参院選中の街頭演説で公務員をやり玉に挙げ、「極左の考えを持った人たちが社会の中枢に入っている。極端な思想の人たちは辞めてもらわないといけない。これを洗い出すのがスパイ防止法だ」と語りました(7月14日)。「思想統制をするものではない」と釈明しますが、「スパイ防止」の名で権力側が個人の内面に踏み込み、差別・排除しようという狙いは疑いようがありません。
実際、神谷氏は、戦前の弾圧立法である治安維持法を「悪法と言うが、共産主義者にとって悪法だろう」(7月12日)と正当化しています。しかし治安維持法のもと弾圧対象は無制限に広がりました。共産党だけでなく自由主義者や多くの文化・知識人、宗教団体まで弾圧され、自由と民主主義、戦争反対の声が押しつぶされました。
その痛苦の反省から日本国憲法には「思想・信条の自由」「信教の自由」「表現の自由」などが規定されました。ところが参政党が参院選で掲げた「新日本憲法(構想案)」はそうした人権規定が一切ありません。同党のスパイ防止法案制定はこうした考えから導き出されています。
■国民民主や維新も
スパイ防止法案はいま浮上したものではありません。中曽根康弘政権下の1985年に自民党が「国家秘密法案(スパイ防止法案)」を提出しています。防衛・外交にかかわる「国家秘密」を外国に漏らした者に死刑を含めた厳罰を下す内容で、統一協会(世界平和統一家庭連合)と一体の勝共連合が署名・請願運動を熱心に展開し成立をはかろうとしました。
しかし、「国家秘密」の中身が無限定に広がり、取材・報道の自由や国民の知る権利を脅かす危険性が明らかになり、反対世論の高まりと日本共産党などの国会論戦による追及で86年に廃案に追い込まれました。
その後、自公政権は「国家秘密法案」よりも秘密指定の対象を広げる「特定秘密保護法」(2013年)などの法律をつくってきました。「次にやろうとしているのは何か。国内での徹底的な言論弾圧」(日本共産党の小池晃書記局長)というのが今回のスパイ防止法案です。
参政党だけでなく、国民民主党や日本維新の会も参院選公約で「スパイ防止法の制定」を掲げ、自民党も選挙終盤に法案導入に向け検討を進めると表明。これら諸党の危険な連携も予想されます。スパイ防止法案を許さない国民的な大運動を巻き起こす時です。








