しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2025年8月20日(水)

主張

護衛艦の豪州輸出

国際紛争助長につながる暴挙

 日本が、憲法の平和主義をいっそう空洞化させ、国際紛争の助長につながる、攻撃能力の高い大型兵器を海外に輸出しようとしています。

 豪州政府は5日、同国海軍が導入を計画する次期戦闘艦について、日本が提案した最新鋭の「もがみ」型護衛艦(FFM)を改良した新型FFMにすると発表しました。

 豪州政府は、老朽化した戦闘艦(フリゲート艦)を11隻の新型FFMに置き換える計画です。総額は100億豪ドル(約9500億円)を見込み、11隻のうち3隻を日本で、残りを豪州で建造すると報じられています。2026年初めに最終契約を結び、29年に最初の艦を日本から豪州に引き渡す予定です。

 実現を許せば、初の「護衛艦」(英語名はデストロイヤー=破壊者)の輸出になります。日本が現在、英国、イタリアと共同開発している次期戦闘機に続き、大型攻撃兵器の輸出をいっそう拡大する重大な動きです。

■長射程ミサイルも

 新型FFM(全長142メートル、満載排水量6350トン)は敵のレーダーに映りにくいステルス設計で、対潜水艦戦などの能力が強化されます。

 中でも「もがみ」型との大きな違いは、政府・防衛省が「敵基地攻撃能力」として開発・導入を進める長射程ミサイルを搭載できるようになることです。報道では、搭載ミサイルは、射程1000キロに及ぶ「12式地対艦誘導弾能力向上型」とされます。

 新型FFMに関する豪州政府の説明資料は「(長射程ミサイルで)海上や陸上の目標を水平線を越えたところから攻撃できる」とし、「より大規模で殺傷能力の高い水上戦闘艦隊を(豪)海軍にもたらす」と強調しています。

 しかも、日本は新型FFMについて、米空母機動部隊との共同行動に有用と売り込んできました。

 豪州軍はこれまで、米軍によるイラクやアフガニスタンへの侵略戦争に部隊を派遣し、ともに戦ってきました。日本が輸出した同艦が、こうした無法な戦争で使われない保証はありません。

■三菱重工に補助金

 日本からの兵器の輸出はかつて、憲法の平和主義に基づき全面禁止されていましたが、1980年代以降、次々と緩和されてきました。今では完成品の輸出も「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5類型に該当すれば容認されます。ただし、今回の護衛艦輸出は当てはまりません。

 しかし、安全保障面で協力関係にある国との共同開発・生産は認められるとし、日豪の「共同開発・生産」という口実でなし崩し的に行われようとしています。

 看過できないのは、新型FFMの製造企業である三菱重工に対し、同艦を輸出仕様に改修するための費用を政府が全額補助しようとしていることです。政府が22年に決定した安保3文書に基づいて新設した「防衛装備移転円滑化基金」によるものです。巨額の税金を軍需企業に注ぎ込み、もうけを後押ししようとするなど言語道断です。

 「国際紛争助長国家」「死の商人国家」への道を突き進むことは許されません。


pageup