2025年8月20日(水)
きょうの潮流
奇跡と呼ばれてきました。世界有数のヒグマの生息地、北海道・知床半島。400~500頭が生息していますが、一般人が襲われる事故は長年にわたって起きてきませんでした▼2005年には世界自然遺産に登録。観光客が増えるにつれ、ヒグマと人との間にあつれきが生じるように。接触も大幅に増え、地域の関係者は人身被害が起きかねない状況だと警鐘を鳴らしていました。そして先日、登山者が襲われ亡くなりました▼今年も各地でクマによる被害が相次ぎます。夏は食べ物が不足するうえに、異常気象がクマの行動に影響を与えていると指摘する専門家も。主食の植物や果実の成育の時期が早まり、食物を求め人里に現れる可能性が高まっているといいます▼世界にいる8種類のクマのうち、ヒグマとツキノワグマが大陸から日本にきたのは数十万年前。比べて人間が住み着いたのは数万年前。クマは私たちの大先輩で、つき合いも長い▼しかしここ20年の間に数多くのトラブルに見舞われるようになりました。農学博士でクマの生態に詳しい山崎晃司さんは、里山の減少や、人間の都合で森の様子が変わったことを理由にあげます。森林を切り開き、好物の木の実がならないスギやヒノキの森に植えかえてきたことを(『にっぽんのクマ』)▼日本の森で生態系の頂点に位置する野生動物。「事故が起きたら駆除」をくり返すのではなく、クマの正しい姿を理解し、共存するために知恵を絞ることが環境を変えた人間の責任でしょう。








