2025年8月18日(月)
主張
日米関税と農業
食料を米国に委ねていいのか
トランプ米政権に日本が屈した日米関税交渉は、合意文書がなく、新関税率発動後に両国で関税率の解釈が食い違うなど極めてずさんです。もともと国際ルールを破り日米貿易協定を一方的に破棄したもので、今後、どんな勝手な要求を突きつけられ「合意」を破られるか予断を許しません。
危機に直面する日本の農業を崩壊させかねない点でも重大です。石破茂首相は「合意」発表(7月23日)の際、「農業を犠牲にする内容は一切含まれない」と強調しました。しかし、日米両国の発表には違いがあります。
日本政府の発表は、主食であるコメはミニマムアクセス米(MA米、最低輸入機会)の枠内で国内の需給状況等を勘案しつつ必要な調達を確保する、大豆・トウモロコシ等は米国産の輸入を拡大する、と抽象的です。
■弱るコメ生産基盤
一方、米国の発表文書は、米国産米の輸入を直ちに75%増やす、トウモロコシ、大豆、肥料、バイオエタノールなど80億ドル(約1兆2千億円)の米国産品を輸入する、と具体的です。
トランプ米大統領は「日本はコメに700%の関税をかけている」と事実に反する批判を重ね日本にコメ市場開放を迫ってきました。日本政府は「コメ輸入拡大を交渉材料としない」としてきましたが、実際は米国からの輸入を増やすもので、米国の要求に屈し譲歩したことは明白です。
石破政権は、MA米の枠内で主食用には回らないので国内米生産に影響しないかのようにいいます。しかし、20年以上に及ぶ年77万トンのMA米の輸入自体がコメの生産基盤を弱体化させています。約半分の35万トン前後を占める米国産を75%増やせば60万トンになります。多くは国内産と競合する中粒種で主食用にしなくても加工用などで国産米を圧迫するのは避けられません。
■輸入依存の無責任
昨年来の「コメ騒動」に乗じて小泉進次郎農水相がコメの緊急輸入に言及し、財政制度等審議会がコメの「安定供給の観点から」MA米活用を提言するなど政府内ではコメの輸入拡大を求める声が公然化しています。「合意」の根底に、「不足すれば輸入すればいい」とする日本政府の極めて安易で無責任な考えがあると言わざるを得ません。
トウモロコシや大豆はすでに9割以上を輸入に依存し、多くが米国産です。「合意」は日本の食料自給率のいっそうの低下をもたらすうえ、食料輸入の米国への依存・従属を強めます。「アメリカファースト」のトランプ政権のさじ加減で日本の食料供給が左右され、食料の安全保障が脅かされるのは必至です。
米国産農産物を押しつけられる一方、日本から米国への輸出では無税だった緑茶などに新たに15%の関税がかけられます。牛肉は、米国が日本側の解釈に従ったとしても26・4%の高関税が維持されます。米国の利益を一方的に保障する不平等な「合意」です。
このような理不尽な「合意」では日本の経済主権、コメや農業は守れません。横暴な米国に「ノー」と言えない自民党政治の大本からの転換を迫る国民的運動が求められます。








