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2025年8月14日(木)

ベトナム共産党との理論交流会談 画期的成果

田中悠副委員長に聞く(上)

一段と深みのある交流に

テーマ 平和構築と人権擁護

 日本共産党とベトナム共産党の第11回理論交流会談が8月2日にベトナム・フンイエン省で開かれました。双方の代表団が「新しい世界情勢における平和構築と人権擁護」をテーマに8時間以上にわたり濃密な議論を交わした今回の理論交流の成果について、日本共産党代表団の団長を務めた田中悠副委員長・書記局長代行に聞きました。(編集部)


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(写真)インタビューにこたえる田中悠副委員長

 --日本共産党とベトナム共産党との理論交流は11回目となりました。どのような特徴があったのでしょうか。

 田中悠副委員長 理論交流は2007年、当時の志位和夫委員長とノン・ドク・マイン書記長との合意にもとづいてスタートし、今回は2022年の東京開催以来、3年ぶりの開催となりました。過去10回にわたり、社会主義や21世紀の世界情勢などについて双方の理論的な知見、考え方を交換してきましたが、今回は一段と深みのある交流ができたと感じています。

 テーマは「平和構築と人権擁護」という国際政治の直面する重要な課題を設定できました。ベトナム側団長のグエン・スアン・タン政治局員(ホーチミン国家政治学院学長・理論評議会議長)と私が基調報告し、日本側とベトナム側からそれぞれ5本の報告が行われたのですが、一つひとつの報告が大変興味深く、双方とも集中して報告を聞き、議論する会合となったのが大きな特徴でした。

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(写真)第11回理論交流会談に参加する日本共産党とベトナム共産党の代表団=2日、ベトナム・フンイエン省

権利いかに守る

 --ベトナムとの交流で「平和と人権」をテーマとされたことに、興味をそそられました。

 田中 はい。今回はじめて「人権擁護」が理論交流のテーマになりました。平和と人権の不可分の関係について双方から言及があったのですが、生存権など人権を守ることが平和をつくる土台であり、平和もまた人権を実現するのに欠かせない基盤であることが強く意識されていました。

 私の基調報告では、ガザでのジェノサイド(集団殺害)や中東での紛争、ウクライナ戦争などの重大な逆流があるものの、やはり平和と進歩が世界史の本流であるという綱領の世界論をのべ、核兵器禁止条約や東南アジア諸国連合(ASEAN)など平和の地域協力の流れ、国際的な人権保障の発展に触れました。

 そのうえで日本共産党が「東アジアの平和構築への提言」を出して、軍事強化ではなく対話と包摂で積極的、能動的に平和を構築しよう、市民運動の力を発揮しようと提唱してきたこと、「提言」をもって欧州や中国などと交流し、相互理解や連帯を築いてきたことを紹介しました。さらに、「人間の自由」についての党の理論的探究とその成果を報告しました。

 ベトナム側は近代思想史、国際条約の到達点、人間の安全保障、資本主義の害悪など、さまざまな角度から包括的に「平和と人権」を語り、私たちに強い印象を残しました。ベトナムは民族独立と自由を求めて大国とたたかい続けてきた歴史を持ちますが、ベトナムの独立宣言でアメリカ独立宣言(1776年)やフランス人権宣言(1789年)が引用されていることが語られました。

 また、DX(デジタルトランスフォーメーション)や急速なAI(人工知能)・デジタル技術の進歩のなかで、いかに労働者や国民の権利を守るかという点に強い問題意識を持っていました。ジェンダー、障害者、LGBTQの権利保障への言及もありました。なによりもベトナムが国際的な人権保障の到達点をしっかりと吸収し、国づくりに生かそうという熱意に満ちていたことが印象的でした。

 日本側代表団のメンバーは、ジェンダー平等、排外主義、「自由な時間」についてのマルクスの探究、新自由主義に対する労働者のたたかい、平和と人権の相互関係--をそれぞれ報告しましたが、タイムリーで多角的な問題提起ができた、チーム力を発揮できたと思っています。(※日本側報告の主題は8月3日付本紙)

「平和提言」共感

 --日本共産党の外交政策や理論的探究について、ベトナム側からどのような反応がありましたか。

 田中 「平和提言」と理論的探究の両方に、強い反応がありました。ベトナム側は日本共産党との理論交流を高く評価しており、今回の理論交流会談も大変重視した構えで臨んでいました。政治局員であるタン議長が丸1日フルに参加して、共同議長として直接会議をとりしきり、理論評議会の3人の副議長も参加しました。いずれも著名な、ベトナムの第一級の理論家たちです。

 ホーチミン国家政治学院を訪問すると、中央委員であるドアン・ミン・フアン副学長と学院指導部が時間をとった会談を用意していて、教室を見学する時間がないほどでした。

 驚いたのは、理論評議会とともに今回の会談を支えてくれたベトナムの政府機関の実務担当から、休憩時間に「『自由な時間』に関心を持ちました」と話しかけられたことです。理論評議会や代表団でない若手の実務者が、事前に志位議長の講演などを読んで、労働者の「自由な時間」の拡大はベトナムの発展状況でどう適用できるのだろうと、考えをめぐらせていたというのです。日本共産党の理論研究への強い関心を折々に触れて感じる訪問となりました。

 「平和提言」でのわが党の立場にも強い共感が示されました。今回の訪問では、ベトナム共産党のチャン・カム・トゥ書記局常務、ブイ・タイン・ソン副首相・外相との会談を持ちましたが、わが党が平和構築と核兵器廃絶に重点を置いていることに賛同が示され、現在の世界の諸課題の解決に向けて、協力していくことを確認しました。これらの会談を報じたベトナムの公的メディアの記事は、わが党が「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)を重視していることを特記していて、「平和提言」の内容をよく押さえてくれているんだと、うれしい思いでした。

悲観的にならず

 理論交流にはグエン・ミン・ブー筆頭外務次官が終日参加し、現在の国際情勢についての見解の報告があったうえ、休憩時間や夕食会で情勢についてさまざまに意見を交換しました。

 情勢に関して双方は、“危機を直視することと悲観的になることは違う”という考えをともに言及しました。複雑で困難な情勢であっても、国際法に基づく平和秩序や相互尊重などの原則にしっかり立って、連帯していくことが大事だと確認しました。「平和提言」の有効性を改めて感じましたし、ASEANの努力に触れた思いでした。今回、人権擁護をテーマにとりあげたことで、協力の幅の広がりも視野に入ってきました。

 ベトナム側は、今回の理論交流を総括して、理論交流は両党関係の強化だけでなく国際社会全体の平和構築、人権保障に貢献するものだと高く評価しました。私たちも今回の会合の成功と、成果をふまえた第12回の開催を宣言して、会議を締めくくりました。


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