2025年8月14日(木)
きょうの潮流
学生時代に出合った映画がアニメーションの道へといざないました。子ども向けの枠をこえたフランスの長編アニメ。目を見開かされたのはアニメで「思想」を語れることでした▼ことし生誕90年となる高畑勲さんの足跡をたどる展示会が都内で開かれています。「日本人が日本のアニメーションを作るとはどういうことか。いつも考えていた」と言っていた監督の作品は亡くなった後も多くの心をつかんでいます▼野坂昭如の戦争小説を映画化した「火垂(ほた)るの墓」のコーナーでは原作を忠実に再現しようとしていたことがうかがえます。全文をコピーし場所や時間、人物ごとに再構成したノートには書き込みがびっしりと▼自身は9歳で岡山空襲を体験。火の雨の中を逃げ惑いました。ともに制作にあたった戦後生まれのスタッフには少しでも共有するため、いわさきちひろの絵本『戦火のなかの子どもたち』を回覧しました▼どうやって現代と結びつけるかを考え続けた高畑さん。それは原作には書かれていなかった映画のラストシーンにも示されています。未来に起こるかもしれない戦争に対する想像力を養ってほしいとの願いを込めて。「火垂るの墓」はあす終戦の日に地上波で放送されます▼展示会の一角にはアニメの可能性を追い求めた高畑さんのこんな言葉が掲げられています。「勇気や希望やたくましさも描くことはもちろん大切ではあるが、まず人と人がどうつながるかについて思いをはせることができる作品もまた必要であろう」








