2025年8月11日(月)
主張
日航機墜落事故40年
安全が最優先になっているか
乗客乗員520人が犠牲になった、単独機としては航空史上最悪の惨事―1985年8月12日の日本航空ジャンボ機墜落事故から40年です。
今年も多くの遺族や関係者が墜落現場の群馬県上野村の御巣鷹の尾根を訪れ、追悼するとともに、航空機事故が繰り返されないように祈り、安全を訴えています。あらためて空の安全が最優先されているのか、問われます。
空の安全を取り巻く状況を大きく変えているのが、アベノミクスが旗を振ったインバウンド(訪日客)の急増です。自公政権が推進し続け、2016年に2千万人を突破、20年に4千万人を目標にして達成、30年に6千万人を目標にしています。
しかし、この急増に応じた空の安全を支える体制が取られているとはいえません。
■半数がヒヤリ経験
パイロット、客室乗務員、整備士らで組織する労働組合の団体・航空労組連絡会の春闘アンケートでは、「人員が不足」84%、「この1年間の安全は低下している」34%、「ヒヤリハットを経験した」42%になっています。空の安全を現場で支える人たちの約半分が業務中に危険を感じたことがあり、3人に1人が「安全が低下している」と見ているのです。
航空機事故の恐ろしさをあらためて見せつけたのが、24年1月2日の海上保安庁機と日航機が羽田空港滑走路上で衝突した事故でした。乗員の適切な対応で燃える機体から乗客367人全員が脱出できたと高く評価されています。客室乗務員がドアの数だけ配置されていたことが大きな教訓だとされ、客室乗務員の保安要員としての重要な役割があらためて認識されました。しかし、現実には多くの航空機でドア数に対応する配置はされていません。
同事故は航空管制官の不足、過密労働の問題も浮かび上がらせました。羽田の発着回数は93年約20万回から現在約50万回に大きく増えています。ところが「航空管制官等定員数」は減少しており、過密労働、負担増にさらされています。管制官の大幅増員は待ったなしです。
こうした安全の基盤となる現場の改善要求に背を向けながら、政府は発着回数増、滑走路増設などを打ち出しています。政府は安全最優先の航空行政をすすめるべきです。
■空の平和が不可欠
空の安全にとって戦争が現実の脅威となっています。
20年代に入ってからも、軍事緊張の高まっている地域で、ミサイル誤射などにより、ウクライナ国際航空機、アフリカン・エクスプレス航空機、アゼルバイジャン航空機が撃墜されています。
ウクライナと接する空域では、妨害電波の影響とみられるGPS(全地球測位システム)の不具合が多く発生しています。米軍のイラン核施設攻撃のさいもGPS妨害が増加、航空網が混乱しました。
日本でも、「有事」を想定し、11空港を自衛隊の円滑な利用のための特定利用空港に指定しています。米軍機の利用も活発で24年には21空港317回にも及んでいます。
空の安全には平和な空もまた不可欠です。








