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2025年8月6日(水)

きょうの潮流

 あの日、6歳だった岸田弘子さんは爆心地から1・5キロの自宅で被爆しました。離れのトイレにいた時、ドーンという音とともに目の前は真っ暗に。崩れ落ちた土壁の下から「助けて、お母さん」と叫んでいました▼母に手を引かれ逃げる最中に見た無言の人の行列。息の絶えた子を背負い、食べ物を求める若い母親。真っ赤なトマトに垂れた黒い雨。子ども心に焼きついた強烈な記憶は悪夢のようによみがえりました▼広島市の広報「市民と市政」の最新号に、86歳となった岸田さんの写真が掲載されています。娘と孫、ひ孫とともに、平和記念公園で手を合わせる姿。受け継がれていく平和を願う祈りです▼岸田さんの記憶は世代をこえて伝えられ続けています。20歳で最年少の被爆体験伝承者となった増本夏海さんもその1人。「聞くだけでなく、自分も平和のために何かしたい」と。被爆2世の山本悦子さんも広島を訪れた人々に講話しています▼伝承者の講話の場には高校生らの姿も。彼らは日本政府に核兵器禁止条約の批准をと訴える署名も呼びかけていました。広島市内で開かれた全国高校生平和集会は、人類が核兵器とは共存できないことを、いま改めて学び、行動することの大事を▼被爆から80年。その歩みは、核廃絶をめざすたゆまない運動と重なります。世界で、日本で、逆流が起こるなか、連綿と引き継がれてきた平和への思い。「無差別に殺された多くの命を過去のものにしないで」。被爆者、岸田さんの心のさけびです。


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