2025年8月4日(月)
子ども版「防衛白書」 2400小学校に6100冊配布
脅威あおり軍拡正当化
防衛省が、子ども版「防衛白書」を7月時点で全国約2400の小学校に計6100冊を配布していたことが分かりました。全日本教職員組合(全教)の調査によると青森、岩手、山形、福島、長崎など8県に配布。文書は中国やロシアなどを名指しして脅威をあおり軍事力強化を正当化し、意見が分かれる安全保障政策などについて政府の見解を一方的に教え込む内容で、教育現場で戸惑いの声が上がっています。
![]() (写真)小学校に配布された子ども版防衛白書の表紙 |
防衛省は2021年から子ども版「防衛白書」を毎年作成していますが、学校への配布は今回が初めて。各地の防衛局が3~5月ごろから、県の教育委員会に面談や通知を行い、小学校に冊子を配布。「図書館を含む様々な場面でご活用いただきたい」(福島教育委員会への通知)などとして、福島では1校1冊、長崎では1校10冊を直接送付しました。防衛省は事前に文部科学省に確認したとしていますが、文科省は全教の要請に対し「他省庁の作成物の内容にコメントする立場になく」、各自治体が判断するとして事実上黙認しています。
今回配布した子ども版「防衛白書」は、ウクライナがロシアに攻め込まれた理由は「防衛力が足りなかった」とし、「『抑止力』が大切です」と明記。中国、ロシア、北朝鮮の軍事活動に触れ「日本が位置する地域は安全とはいえません」と脅威をあおっています。一方、軍事的な緊張を高めている在日米軍は「地域の国々に大きな安心をもたらす存在」だと賛美。自衛隊の戦車や戦闘機などの紹介や自衛官募集のホームページを掲載しています。
また、白書と一緒にアンケートも同封し「より多くの子どもたちに閲覧してもらえるものを作成するため」に子どもからの感想を記入するよう要求。「活用実績」に関する質問項目に「総合的な学習の時間に使用」という欄が設けられており、授業への活用を促す狙いがあるとみられます。
教育現場に戸惑い
共産党や民主団体が回収を要請
白書の配布に自治体や教育現場でも戸惑いが広がっています。長崎市では、さまざまな国々にルーツを持つ子どもたちが在籍し、特定の国を名指しする白書の内容が子どもたちを傷つける可能性があるため、職員室など子どもの目が届かない場所に保管する対応をとっています。福島県のある小学校は、送付された白書を職員全員が回覧し「これは問題だ」と話題となり、子どもの目に触れないよう対応。60代の男性教員は「軍国教育のような内容に違和感を持った。子どもたちには色々な考えを伝え、自主的に考えてもらうべきだ」と語ります。
ながさき平和委員会の冨塚明事務局長は「力が強い者が脅して従わせる『抑止』と、みんな仲良くしようと学校で教える『対等平等』は相容れない」と批判。この問題を巡って日本共産党の地方議員や、新日本婦人の会、全教などの民主団体が防衛省や自治体に、白書を活用せず回収することなどを申し入れています。









