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2025年8月4日(月)

きょうの潮流

 38年という、歳月を思います。なんども絶望の淵に突き落とされ、重い十字架を背負って生きてきたという人生。それはもう取り戻せません▼暗転したのは21歳のときでした。突然目の前に警察官が現れ、逮捕された前川彰司さん。前の年の1986年に福井市で起きた女子中学生殺害事件の容疑をかけられ「まったく身に覚えがなく、驚きというか困惑に近いものがあった」と▼潔白を主張しましたが、連日の長時間におよぶ取り調べで自白を強要され、追い詰められていきます。物的証拠がなく一審は無罪判決でしたが、二審で逆転有罪。「服に血が付いた前川さんを見た」などとする知人らの証言を根拠にして▼前川さんは服役後、無実を証明するために裁判のやり直しを求めました。そして2度目の再審請求で証言が事実と違うことを知りながら検察側が隠していたことが判明。再審判決は「不誠実で罪深い不正」だと警察や検察を厳しく批判しました▼無罪を信じてきた母親は失意のまま亡くなり、息子の活動を支え続けた父も90歳をこえる高齢に。冤罪(えんざい)は、過去の失われた時だけでなく、本人や周りの未来の時間さえ奪います▼袴田巌さん、元看護助手の西山美香さん、大川原化工機事件…。相次ぐ冤罪は、いずれも警察・検察の違法捜査や不正、人権無視の体質によって引き起こされました。60歳となって無罪が確定した前川さんは、多くの犠牲を払った思いをこう訴えました。「これでよかったということで、終わらせてはいけない」


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