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2025年8月2日(土)

主張

長射程ミサイル配備

米戦略に追従し戦火呼び込む

 政府・防衛省は、他国領土を直接攻撃できる長射程ミサイルを2025年度末までに実戦配備する計画です。同省は「具体的な配備先は検討中」(中谷元防衛相)としていますが、熊本市の陸上自衛隊健軍駐屯地を最初の配備先とする方向で最終調整していると報じられています(共同通信7月28日付)。

■台湾有事にも使用

 防衛省が配備を狙っているのは、「12式地対艦誘導弾(SSM)」を改良した「能力向上型」と呼ばれる長射程ミサイルのうち、地上の発射機から撃ち出す「地発型」です。「九州からでも(中国)大陸の一部が射程に入る」(同前)とされています。

 来春以降、陸自湯布院駐屯地(大分県由布市)にも置く方針で、将来的には陸自勝連分屯地(沖縄県うるま市)への配備も見据えているとしています。

 健軍、湯布院、勝連にはすでに、12式SSMを運用する地対艦ミサイル連隊が置かれています。また陸自大分分屯地(大分市)では、12式SSM能力向上型など長射程ミサイルの保管も想定した大型弾薬庫の建設が強行されています。中国に軍事的に対抗し、九州・沖縄を長射程ミサイルの拠点にする企てです。

 中国に対する軍事作戦では、自衛隊と米軍が昨年2月に実施した日米共同統合指揮所演習「キーン・エッジ」で、日本が武力攻撃を受ける「日本有事」ではなく、「台湾有事」が初めて本格的に想定されたと報じられています(「産経」4月6日付)。

 指揮所演習とは、コンピューターを使ったシミュレーションです。報道によれば、演習では、日本側が「台湾有事」を日本の存立を脅かす「存立危機事態」と認定し、集団的自衛権を発動。これを受けて米側が台湾海峡を航行する中国軍の艦艇を攻撃するよう日本側に要請し、航空自衛隊の戦闘機がミサイルで攻撃をしたとされます。

 長射程ミサイルが配備されれば、こうしたケースで九州や沖縄からの攻撃も可能になります。報道では、「台湾有事」に際して中国軍が米軍佐世保基地(長崎県佐世保市)を攻撃するとの想定も行われたとされており、九州や沖縄の長射程ミサイルの配備先が標的になるのは明らかです。

■外交での解決こそ

 共同通信によれば、昨年2月の「キーン・エッジ」では、「台湾有事」をめぐり中国が核兵器の使用を示唆する発言をしたとのシナリオも盛り込まれ、自衛隊は米軍に「核の脅し」で対抗するよう求め、米側が応じたといいます(7月28日付)。「台湾有事」が核戦争にまでエスカレートする危険を示すものです。防衛省は「事実無根」と弁明していますが、唯一の戦争被爆国が「核の脅し」を求めたとすれば許しがたいことです。

 日中間には「互いに脅威とならない」とする首脳間の合意(08年)があります。中国による力を背景にした現状変更の動きが許されないのは当然です。同時に、日本は米国の対中国軍事戦略に付き従い、軍拡に突き進むことをやめるべきです。大事なのは外交による解決で、長射程ミサイルの配備ではありません。


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