2025年7月13日(日)
シリーズ 参院選勝利へ 基本政策から
緊急に国の支出増で介護基盤崩壊を打開
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2000年の創設から25年を迎えた介護保険は、訪問介護などでサービス基盤の崩壊が加速、保険制度の根幹が揺らいでいます。社会保障予算の削減路線をひた走る自民党政府が、介護報酬の本体部分を実質で、創設時より5・13%も引き下げてきたからです。
報酬引き下げ即撤回を
日本共産党は、介護への国の支出を増やし、介護の基盤崩壊を打開する緊急対策を実施します。
基盤崩壊がとりわけ顕著なのは訪問介護です。訪問介護は、ホームヘルパーが利用者宅を訪問し、家事支援や、排せつ・食事などの介助を行う「在宅介護の要」です。ところが今年1~6月期の訪問介護事業者の倒産が45件と過去最多を更新しました(東京商工リサーチ調べ)。2年連続の最多更新です。休廃業・解散も含め、昨年撤退した訪問介護事業者は529件にのぼりました。
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そのもとで訪問介護事業所が一つもない「ゼロ」自治体や、「残り1」で消滅寸前の自治体が、中山間地を中心に、全自治体の5分の1以上に広がっています。「しんぶん赤旗」日曜版のスクープで明らかになりました。介護崩壊の決定的証拠が数値的に示され、衝撃が広がりました。保険料を強制徴収されているのに必要なサービスが使えない。保険制度の根幹が問われています。
訪問介護「ゼロ」自治体は、昨年6月末から12月末までの半年で97町村から107町村へ10増えていることが本紙調査で明らかになりました。引き金になったのが、自公政権が昨年4月に強行した訪問介護基本報酬の2~3%引き下げです。訪問介護事業所は2022年度決算で、すでに4割が赤字だったのに政府が引き下げを強行したのです。実施後の政府調査で、同事業所の6割が減収になりました。職能団体の全国ホームヘルパー協議会と日本ホームヘルパー協会は、実施前に「私たちの誇りを傷つけ更(さら)なる人材不足を招く」と激しい「抗議文」を厚生労働省に突きつけていました。
京都市で小さな訪問介護事業所を経営する櫻庭葉子さん。コロナ禍では防護服を着て患者も訪問し、命綱となりましたが経営は赤字に。その矢先の引き下げでした。分刻みのスケジュールでヘルパーの稼働率を引き上げしのぎました。ところが。「この猛暑。利用者さんの体調不良やヘルパーの疲弊が予想されたので、減収を覚悟し訪問を減らそうと利用者3人に老健施設へ一時入所してもらいました。でも閉鎖した事業所から欠かせない依頼が入って減らせない。この夏、乗り越えられるか」
訪問介護基本報酬の引き下げ撤回・再改定は介護関係者や自治体の一致した要求です。地方議会の意見書は16道県を含む292自治体に広がっています。全国知事会も5月「臨時改定等の措置を速やかに講じる」よう政府に要望しました。しかし自公政権はかたくなに背を向け、加速する基盤崩壊を食い止める有効な対策を何ら打てていません。失政のうえに無策を重ねています。参院選挙で厳しい審判を下すしかありません。
日本共産党は、一刻を争う緊急策として、訪問介護の基本報酬を元に戻します。削減されてきた介護報酬を底上げし、介護事業所の継続に向けた支援を行います。また、介護の事業が消失の危機にある自治体に対し、国費で財政支援を行う仕組みを緊急につくり、“民間任せ”では事業が成り立たない事業所・施設の経営を公費で支えます。
処遇改善で職員確保へ
![]() (写真)電動カミソリで利用者のひげをそるホームヘルパー=京都市内 |
介護職員不足が深刻です。なかでもホームヘルパーは有効求人倍率は十数倍で高止まりし、一人のヘルパーを十数事業所で取り合う状況です。
昨年、ついに介護従事者数が初めて前年比2・8万人も減少、介護業界を震撼(しんかん)させました。政府は22年度に比べ26年度に約25万人の介護職員を増やす必要があるとしてきましたが、逆行しています。
介護職員不足の最大の要因は、全産業平均を大きく下回る低賃金と劣悪な労働条件です。自公政権は昨年4月の介護報酬改定で、介護職員の処遇改善分に0・98%、その他で0・61%、合計1・59%のプラス改定をしたといいます。
ところが処遇改善は全産業平均との格差解消には「1ケタ違う」低水準で、物価高騰にも見合いません。全産業平均との賃金格差は逆に23年の月6・9万円から24年は月8・3万円に拡大してしまいました(厚労省調査)。これにたいし特養ホームや老健施設など事業者団体が「私たちを見捨てないでください」と声をあげ、「全産業並みの賃金確保に向けた充分な賃上げ」へ臨時改定の財源確保を求めました。全国知事会も臨時改定を求めています。
介護職員の減少を食い止め介護職員を確保するには、賃金を速やかに全産業平均まで引き上げることが急務です。
日本共産党は、介護保険制度への国庫負担を10%増やし、公的助成で賃上げをすすめ、介護職員の賃金を「全産業平均」並みに引き上げます。必要な財源は1・3兆円。大企業や富裕層に応分の負担を求め、大軍拡を中止して生み出す「国民のための財源」25・6兆円の一部をあてます。
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介護保険の国庫負担を現行25%から35%に引き上げることは、上野千鶴子東京大学名誉教授ら介護保険の再生を願う市民グループも要求しています。また自民・公明両党は、政権復帰した12年総選挙の公約に掲げていますが、10年以上「公約違反」を続けています。
21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会(21・老福連)代表幹事の正森克也さんはこう語ります。
「著しい賃金格差のため介護福祉士の資格がある職員が他産業に流出しています。団塊の世代が80代にさしかかり、介護需要は増えているのに応えられず『在宅放置』されている人が水面下で増えています。こんな状態では公的保険と言えません。国庫負担を10%引き上げ、利用料や保険料に跳ね返らせず、賃上げすることは私たちの願いです。赤字国債によらない財源を示している共産党に期待します」
負担増の3大改悪反対
崩壊が進む介護保険。ところが自公政権は反省もなく「史上最悪の介護保険改定」をたくらんでいます。それは(1)利用料2割負担の対象拡大、(2)ケアプラン有料化、(3)要介護1・2の生活援助サービス等を保険給付から外し自治体の事業に移す―など、負担増と給付削減のオンパレードです。
石破政権が6月、閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」では、「2025年度末までに議論が得られるようにする」と期限まで切って改悪を推進しています。自公政権は参院選挙後、議論を本格化させる方針です。
日本共産党はこうした改悪に反対し、保険給付の拡充、保険料・利用料の減免をはかります。












