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2025年7月8日(火)

市民社会の役割提起

“大国”につかない自主的外交探る

ベルリン国際会議 緒方靖夫党副委員長

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(写真)ローザ・ルクセンブルク財団主催国際会議で問題提起発言をする緒方靖夫副委員長=6月24日、ベルリン

 6月23~24日、ベルリンで行われた「力の政治に対峙(たいじ)する進歩的対案」をテーマにしたローザ・ルクセンブルク財団主催の国際会議に日本共産党代表として参加しました。世界情勢を分析し、左翼・進歩勢力がいかに闘うかを議論する会議でした。

 会議には、欧州はじめ各大陸から75人が参加。ほとんどが研究者や大学教授で、政党からの参加は主催者側のドイツ左翼党、ベルギー労働党の代表と私でした。2日間にわたり朝9時から夜9時まで、昼食、夕食も会場で合宿同然に時間通りの議事日程で行われ、実にドイツ的でした。

 財団のビアバウム理事長は開会あいさつで、(1)イスラエルによるイラン攻撃は明確に国際法に反しており、米国の介入は事態を重大化する(2)ガザでの恐るべきイスラエルのジェノサイド(集団殺害)を非難(3)軍事費増など欧州軍事化反対の運動の高揚(4)平和で公正な世界秩序での市民社会の貢献―などを訴えました。

欧州と共同

 会議は変容する世界情勢と国際秩序、グローバルサウスの台頭、市民社会のグローバル平和イニシアチブ、欧州左翼の対案と政治的役割などをテーマにして活発な議論が行われました。

 私は、分科会「平和のための市民社会のイニシアチブ」で問題提起発言をしました。

 これを受けて、司会者は「東アジアの政党が今の国際・地域情勢を分析し、事態打開の道を示し、欧州との共同を提案したことは意義深い」「欧州は核兵器廃絶の課題をもっと真剣に捉える必要がある」と指摘しました。

 参加者からは「日本の平和運動は持続的に発展しているが、弱体化している欧州としては日本との交流を進めたい」などの感想が出されました。

 欧州の左翼・進歩勢力の外交を巡っては、米国にも中国にもつかない「自主的な欧州」の選択が強調されました。米国か旧ソ連かという半世紀前の構成から入れ替わって中国が登場した変化が注目されました。

 カザフスタンの参加者からは、旧ソ連に属した中央アジア諸国でも中国の存在が大きくなるもとで、ロシアか中国かではなく自主的外交を探求しているとの発言がありました。

 ウクライナでの戦争を契機に、欧州連合は軍事費増大を続け、さらにトランプ政権に呼応して、国内総生産(GDP)比5%を打ち出しています。欧州の軍事化に、世論は開戦当初とは大きく変わり不安と疑問が広がるもとで、多数派の結集に向けて国民感情に合った左翼の緻密な対案を練ろうとの提起がありました。

違い鮮明に

 2月のドイツ連邦議会選挙で左翼党が躍進(改選前の28議席から64議席、得票率8・8%)したことについて、同党幹部に端的な理由をたずねました。すると「他党との違いを鮮明にできた」が回答でした。

 与党の社民党と緑の党が軍備拡大に手を染め、野党第1党のキリスト教民主同盟が選挙直前に、極右の主張に沿った移民政策厳格化決議をその助けで可決させたのです。極右との共同はあり得ないはずのドイツの政治タブーを破りました。

 これに反対する左翼党議員の議会演説は大きな反響を呼びました。それまでは党内分派などネガティブな宣伝しか伝えてこなかった大手メディアも、世論に押され左翼党をまともに報道する中で、「反軍拡と反ファシズム」という他の政党にない唯一左翼党だけの立場が鮮明になったというのです。これが劣勢だった選挙情勢を一気に変え、左翼党は女性と青年からの投票で第1党になりました。

 「幸運な面もあったが、一貫して党の立場を訴え続けたことが状況を大きく変える機会を引き寄せた」という同党幹部の謙虚だが確信に満ちた言葉は胸に響きました。(緒方靖夫)

発言要旨

 力の論理や排外的ナショナリズムの台頭の逆流に対し、国際法に基づく多国間主義を重視する市民社会の役割がいっそう重要となっています。

 歴史的背景には(1)植民地主義の終焉(しゅうえん)と人民の自決権の確立などの世界の構造変化(2)気候変動、感染症、人権問題などで、NGO等の専門性、ネットワークが不可欠(3)多様性と包摂性は対話と相互理解を促進する市民社会の特性―があります。

 核兵器禁止条約は政府と被爆者はじめ市民社会による歴史的成果です。日本被団協のノーベル平和賞受賞は長年の市民社会の努力の国際的承認です。

 トランプ政権によるイランの核施設空爆、イスラエルのガザ攻撃、ロシアのウクライナ侵攻など国際法無視の動きが強まっています。G7(主要7カ国)首脳会議のイスラエル支持表明は、戦後国際社会の伝統となってきた「法の支配」を放棄した二重基準です。2003年のイラク戦争反対の際の国連、各国での「国連憲章を守れ」の運動を想起し、新たな段階で運動を飛躍させましょう。

 日本共産党として四つの提案をします。(1)政府に対案を示し、外交に影響を与える多層外交の推進(2)信頼構築と対話を重視するASEANの外交に学ぶ(3)平和構築に不可欠なジェンダー平等、多様性の尊重(4)欧州と日本の進歩勢力の連携(軍事費削減・軍縮の推進、軍事同盟反対、核兵器廃絶、極右排外主義との闘争)―です。

 (党の「東アジアの平和提言」の内容と実践を紹介)

 国際法と多国間協調を基盤とする平和構築、市民社会の外交参画のために国際連帯を強化しましょう。


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