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2025年7月1日(火)

主張

トランプ氏発言

無法を原爆で正当化する異常

 「トランプ大統領は原爆被害の実相を何も分かっていない」「断じて許すことができない」―。米国のトランプ大統領がイランの核施設に対する攻撃を広島、長崎への原爆投下になぞらえて正当化したことに、被爆者らの激しい怒りが広がっています。

■核使用ためらわず

 トランプ氏は、NATO(北大西洋条約機構)首脳会議が開かれたオランダで、米軍によるイラン核施設への攻撃について「あの攻撃が(イスラエルとイランの)戦争を終結させた。広島や長崎の例は使いたくないが、本質的に同じことだ」などと語りました(現地時間6月25日)。

 「力による平和」の立場をとるトランプ氏の発言は、「紛争を終結させるためなら核兵器の使用をためらわない」という極めて危険な姿勢を示したものです。トランプ政権が敵対視する国が対抗していっそうの核兵器の開発や増強に乗り出し、核軍拡競争が激化する危険もあります。

 その意味でも、20万人を超える原爆の犠牲者、後遺症などに苦しんできた被爆者、核兵器廃絶を切実に求める日本国民らの思いを踏みにじる暴言にほかなりません。トランプ氏は日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞を認識していないのではないかという批判が上がるのも当然です。

 トランプ政権が強行したイラン核施設への空爆は、国連憲章と国際法を乱暴に蹂躙(じゅうりん)するもので、イランに先制攻撃をしたイスラエルの無法に加担する暴挙でした。しかも、核施設に対する攻撃はジュネーブ条約をはじめとする国際法に違反し、周辺住民や国境を越えた地域への人道的被害も懸念されています。

 広島、長崎への原爆投下は、日本が降伏こそしていなかったものの抵抗する力を失っている中、一般市民が多数いる無防備状態の都市に対して行われました。いかなる理由があっても決して正当化し得ない国際法違反の無差別大量殺戮(さつりく)でした。トランプ氏が自らの無法な攻撃を自己弁護するために、究極の国際法違反と言える原爆投下を持ち出すなどというのは、言語道断の極みと言うほかありません。

■抗議もしない政府

 重大なのは、トランプ氏の発言を黙認した石破茂政権の姿勢です。

 林芳正官房長官は6月26日の記者会見で、トランプ氏の発言をめぐり「一般的な歴史的な事象に関する評価については専門家等により議論されるべきもの」と語るだけで、評価を避けました。米国に抗議する考えがあるかどうかを問われても「原爆投下に関するわが国の基本的な考え方については累次の機会に米側に対して伝達してきている」と述べるだけで、一切抗議しようとしません。

 石破首相は、イスラエルによるイランへの攻撃は非難したものの、米国の攻撃については「事態の早期沈静化を求めつつイランの核兵器保有を阻止するという決意を示したもの」などと述べ、擁護しています。石破政権は卑屈な「米国言いなり」をやめ、唯一の戦争被爆国の政府としてトランプ氏の発言に強く抗議し、撤回を求めるべきです。


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