2025年6月26日(木)
きょうの潮流
トランプ米大統領が先月、原発の設備容量を2050年までに現在の4倍に増やす大統領令に署名しました。驚いたのは、そのために半世紀にわたる原子力産業に対する「過剰な規制の時計の針を巻き戻す」というのです▼原発の審査期間について、新設する原発の認可に数年かかっていた期間を18カ月に短縮する、既設原発を運転延長する場合も1年以内と定めると。心配なのは、安全が置き去りにされることです▼米国では1979年にペンシルベニア州のスリーマイル島原発で周囲に放射性物質が放出される重大事故が起きました。その最大の教訓が、原子力は「安全」だという思い込みを改めることだといわれていたのに▼原発推進のために政府財源の活用もうたっています。原発の経済性が失われているためです。米国では、この半世紀近くの間に新しく建設され商業運転に入った原発は2基のみ。その2基も建設は遅れに遅れてコスト増加に直面、建設費は1基2兆円以上です▼日本の自公政権の姿に重なります。原子力を「最大限活用」すると原発回帰を鮮明にし、老朽原発をさらに酷使する制度や支援策を打ち出しています。2040年度の電源構成で原子力の比率を現状の8・5%を大きく上回る2割程度にといいます。しかし、専門家らからは絵に描いた餅だとの指摘も▼原子力に固執することは化石燃料に頼ることにもなります。事故を決して忘れず、気候危機打開のためにも再生可能エネルギーの導入拡大こそが急がれます。








