2025年6月2日(月)
石丸・安芸高田市政とは何か 岡本幸信さん 市政実態報告(下)
市民置き去り、自治破壊
![]() (写真)石丸伸二・安芸高田市長(当時)の退任式=2024年6月6日 |
2023年夏以降、広島県安芸高田市の公式動画配信で、石丸伸二市長(当時)が議会や会見で市議や記者をやり玉に挙げた。すると、次々と非公式の切り抜き動画が流された。多くの動画が石丸市長の発言をうのみにし、「公開処刑」、「老害」、「完全論破で公開説教」などの刺激的なタイトルで視聴者をあおった。
誹謗中傷容認
石丸市長は、切り抜き動画を容認。「町や日本のためになるなら燃やせるものは燃やしていい」と議会、マスメディアとの対立を「劇場型エンターテインメント」としてあおり続けた。
石丸市長が「悪役」と描いた市議たちの日常生活は一変した。
山本数博市議は、「『老害』とか『辞めろ』などのはがきや電話が市外から多く送られる」とし、ほかにも、化粧品や4万円のコーヒーメーカーなどが着払いで届けられた。ほかの市議にも同じようないたずらや誹謗(ひぼう)中傷のはがき、電話がいまも続く。
23年夏、石丸市政に反対する複数の市議に殺人をほのめかす投書があり、山本市議は、身の危険を感じ、9月定例会の一般質問を取り下げた。この問題について石丸市長は記者の質問に「被害妄想」と切り捨てた。しかし、翌年2月、SNSに殺人予告を投稿、市議を脅した疑いで県外の男性が広島県警に逮捕=不起訴=された。
石丸市政に反対する市議や市民団体に対し、石丸市長は議会や会見だけでなくSNSの投稿で名指しの批判をしてきた。
名誉毀損認定
山根温子市議から「議会を敵に回すと政策が通らなくなりますよ」と恫喝(どうかつ)を受けたと主張したのも一例。山根市議は、うそのでっち上げの発言による名誉毀損(きそん)だと提訴。今年4月に最高裁が石丸氏による名誉毀損を認定し、市に33万円の賠償を命じた広島高裁の判決が確定した。
20年9月には、石丸市長が議会で「いびきをかいて、ゆうに30分は居眠りをする議員が1名」とSNSに投稿した。居眠りをした武岡隆文市議が、謝罪とともに居眠りの原因が睡眠時無呼吸症候群で軽い脳梗塞を発症したという弁明の診断書のコピーを市長に提出。しかし石丸市長は、診断書を見ずに、シュレッダーにかけ、その後も武岡市議を名指しで指弾した。
武岡市議は嫌がらせや誹謗中傷が増したことで、精神的に追い詰められ、食事が飲み込むことも難しくなるほど憔悴(しょうすい)し、24年1月、68歳で亡くなった。武岡氏の妻が葬儀などで石丸市長へ憤っている姿を見かけたが、今年1月自死した。
石丸氏は、いまだに哀悼の意を表することなく、今年3月に公開された動画でも武岡氏を批判して「これを許してはならない。どう始末してやろうか」と述べ、出演者と一緒に笑い飛ばした。
石丸伸二氏は、地方自治の改革者ではない。身勝手で市民を置き去りにし、民主主義と地方自治を破壊してきた4年間だった。(おわり)









