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2025年5月28日(水)

2025焦点・論点 シリーズ 介護保険25年

ケアマネ不足で介護崩壊の危機

全日本民主医療機関連合会ケアマネジメント委員会委員長 石田美恵さん

低報酬と増える無報酬業務 専門職としての評価が必要

 利用者や家族に寄り添って適切な介護を受けられるように計画・調整するケアマネジャーの事業所(居宅介護支援事業所)が、全国各地で廃止・休止に追い込まれています。介護を受ける入り口が閉ざされかねない事態―。背景にあるのは、有効求人倍率9.7倍(2月時点、中央福祉人材センター調査)という深刻なケアマネ不足です。全日本民主医療機関連合会ケアマネジメント委員会委員長を務める石田美恵さんに聞きました。(本田祐典)


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 ―各地で事業所が次つぎとなくなり、私たちの調査(「しんぶん赤旗」5月11日付)では全国29自治体が事業所ゼロ、201自治体が残り一つ(昨年末時点)となっています。

 ケアマネは介護を必要とする人にとって、これからの人生の方向性を託す存在です。ケアマネが消えれば、介護保険制度が崩壊します。

 いま、本当にケアマネのなり手がいません。東京都内でも、いま中心になっている50代が今後10年間で次つぎ退職し、多くの事業所が消えるでしょう。

 国がケアマネの報酬を低く抑えていて、低賃金が問題化している介護職よりも低くなっています。介護現場で5年働いて受験資格を得るのに、ケアマネになると給与が下がるという逆転現象があります。

 緊急に処遇改善が必要です。ところが、石破政権は介護職への一時金支給(昨年度補正予算)でケアマネを対象外にしました。

 ―多忙で疲弊しているという声も寄せられます。

 各利用者のケアプラン(介護サービス計画書)作成のほかに、「シャドーワーク」と呼ばれる無報酬業務が増大しています。

 ケアマネは利用者や家族、地域の課題を最初につかんで、巻き込まれていく存在です。行方不明や安否確認といった緊急対応のほか、いわゆるゴミ屋敷やヤングケアラー(子ども・若者による世話や介護)、虐待などにも「誰かがやらなければ」と対応します。

 シャドーワークの増大は、国や自治体が公的福祉を後退させ、医療や介護保険の給付を抑制してきた結果です。ヤングケアラーも、同居家族がいる要介護者への生活援助(家事を行う訪問介護)を国が認めないので深刻化しています。脆弱(ぜいじゃく)な社会保障からこぼれ落ちた部分を、ケアマネが支えているのです。

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(写真)厚生労働省にケアマネジャーの処遇改善を求める石田さん(中央左)と全日本民医連の岸本啓介事務局長(同右)=4月28日、国会内

 ―厚生労働省の検討会が昨年12月、シャドーワークを分類し「保険外サービスとして対応しうる」「他機関につなぐべき」「対応困難」としました。

 シャドーワークが存在することを認め、その中身を明らかにしようとしたのはよい変化です。

 しかし、脆弱な社会保障制度を立て直さなければ、業務を割り振る先がありません。結局、ケアマネがやることになります。

 また、ケアマネの職責から外すのではなく、専門的技術が必要な重要業務と評価する部分も必要です。利用者や家族に寄り添う専門職だから対応できる問題もあるからです。

 シャドーワークは、介護本来の役割ややりがいとつながっている側面もあります。それは、私たち民医連が介護・福祉の運動方針に掲げる「まずみる・寄り添う・支援する・何とかする」の言葉からもわかるでしょう。シャドーワークを通じて利用者の本当の願いやニーズに気づくことも少なくありません。

 ―直面する過密化をどう軽減しますか。

 ケアマネが把握した高齢者の課題を行政機関が放置し、対応を背負わせ続ける状況はすぐに改善すべきです。ケアマネから相談や業務の引き継ぎができる場所が必要です。私が所長を務める事業所がある東京都足立区は、高齢者の課題解決にあたるチームを設けています。こういった施策を全国に広げるように求めていきます。

 ―国はケアマネ不足の対策として、担当件数の上限を39件から44件に引き上げました。

 40件以上を担当することは無理です。利用者や家族と向き合えず、件数制限の目的だった「質の確保」がおろそかになります。

 要支援者のカウントについても、2人で1件から3人で1件へと後退させました。要支援の軽視は間違いです。ケアマネの負担軽減にも逆行しており、すべて元に戻すべきです。

 ―いまの介護保険で利用者に十分なサービスを計画・調整できますか?

 ケアマネが必要と判断したサービスであっても、利用できないことがあります。低所得者でも1割負担など自己負担が重いため、利用者や家族の同意を得られない。物価高騰で家計が悪化し、ますます利用できなくなっています。

 介護保険創設時に国が設けた支給限度額も25年間引き上げられず、事実上の制度改悪が進んでいます。上限を超えた部分は自費(全額自己負担)なので、限度内でやりくりせざるをえません。

 国が制度を改悪すればするほど、利用者に寄り添うはずのケアマネが裁量を奪われ、利用を抑制する側に立たされます。

 昨年春に国が報酬を引き下げた訪問介護は、事業所廃止が相次いで、すでにサービス提供体制が崩壊した地域もあります。そうした現場で、ケアマネがヘルパー探しに奔走しています。

 ―国はケアマネの評価を高めるためといい、ケアプラン有料化(自己負担導入)を狙います。

 「ケアマネのため」は、負担増の口実でしかありません。有料化すれば集金業務が新たに発生し、さらに忙しくなります。

 困っている人に対する相談援助は本来、税金でまかなうべきものです。相談者からお金を取ることは、公的な介護給付制度として絶対にあってはならない。相談を控え、必要なサービスを受けられない事態につながります。決して認められません。


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