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2025年5月26日(月)

米価高騰「二重の危機」招いた自民農政

国が責任もち供給安定化を

日本共産党 紙智子参院議員に聞く

 米の価格高騰が家計を直撃しています。価格高騰の背景にある米をめぐる「二重の危機」を招いた自民党農政の失政と効果的な対策について、日本共産党の紙智子参院議員に聞きました。(若林明)

買いたくても買えない-家計を圧迫

増産しろと言われても-生産者急減

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 米の高騰をめぐる「二重の危機」とは、一つは、米は一度スーパーなどの小売店から消えて、やっと出てきたと思ったら、米価が高すぎて、買いたくても買えないという状況になって、家計を圧迫していることです。

「おかわり我慢」

 米不足による「米騒動」が始まる前の価格に比べると店頭での販売価格は2倍に跳ね上がりました。5キロで約2000円だったものが、4000円台を超えています。当然、多くの人々から悲鳴が上がっています。子どもがいる家庭では、親が子どもに「おかわりは我慢して」と言わざるを得ないという切ない声も聞こえてきます。危機的状況で消費者から「米でこんなに苦労するとは思わなかった」と悲鳴が上がるのも当然です。

 二つめの危機は、生産者の問題です。自民党農政のもとで、米を作る生産者が急速に減っています。そのため、今から米を作れ、増産しろと言われても、簡単にできないという状況になっています。

 この10年間で、米農家が46万戸減っています。農地の面積も、生産量も減ってきました。生産量でいうと135万トン減りました。都道府県別の生産量では、1位が新潟県、2位が北海道、3位が秋田県です。それぞれの米の生産量は、新潟県が59万トン、北海道は54万トン、秋田が45万トンくらいです。北海道と新潟を足すとだいたい113万トンくらいになります。それを上回るだけの量が、10年間で減ったということです。

 歴代自民党の農政は、減反と減産を農家に押しつけてきました。米を作るための農地面積は減っていますし、担い手不足は深刻です。さらに、円安の影響で、海外からの肥料などが大幅に値上がりしました。経費の方が高くなり、米を作れば作るほど赤字だというのが、生産者の声です。

 自民党政権は、米生産への支援を切り捨てて、米農家の減少に拍車を掛けました。民主党政権が導入した農地10アールあたり1万5000円の所得補償を廃止し、農家から年間1500億円近い所得を奪ったのです。

市場任せの対応

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(写真)商品棚から米が消えたスーパーの売り場。「お米不足のため一家族1点限り」と掲示されています=2024年8月28日、東京都墨田区

 自民党政権の米問題への対応は危機感がなさ過ぎました。すでに昨年の5月ぐらいには、東京都内の米屋から、米が手に入らないという声が出ていました。米の高騰が始まり、価格転嫁ができない米屋がつぶれることも起こっていました。当時、その問題を、農水省に聞くと、一部の話で全体ではないからと言って、何ら対策をとりませんでした。

 7月から米が店頭から消えはじめ、8月に、宮崎の地震があり、南海トラフにつながる可能性に気象庁が言及しました。当時の岸田文雄首相は、「皆さん、備えてください」と言って、西日本中心に、米を買う動きが、一気に起こり、米屋の店頭から米が消えました。そういう状況になっても政府は、「今刈り取っている新米が、今後出てくれば落ち着く」と言って対応しませんでした。9~10月にかけて米は店頭に出てきましたが、値段が、とんでもなく高くなりました。

 共産党は5月以降、政府に対して備蓄米の放出を提案してきましたが、政府はなかなか決断せず、ようやく、備蓄米放出を決断したのは、今年の1月末です。実際に出たのは3月末からです。備蓄米を出しても、米の価格は下がりませんでした。その背景は、米の総量が不足していることです。需要に対して供給が追いついていない状況がありました。昨年秋以降、米の集荷業者の人たちは、前年に比較しても、在庫が足りなくなると思って、集荷競争が始まってしまったことが、値段がつり上がっていく背景です。

 政府は民間在庫があるから大丈夫だと言ってきましたが、在庫量は前年同月比で年々減ってきています。そのことを突きつけて政府に備蓄米をだすように求めると、政府は、「価格は市場で決まるので、市場には介入しない」と言いました。結局、政府は、市場に全て任せるという考え方に凝り固まって、柔軟な対応をしなかったといえます。

 これまでの、減反の押しつけに無反省な一方で、市場任せにして、国は手を出さない。国民が大変でも、生産者が大変でも、コントロールしなかったということが、米の価格高騰の大本にあります。本来は、米のような主食については安定供給や価格の安定について、国が責任持つことになっています。

増産の姿勢示せ

 米をめぐる危機的な状況を打開するためには、まず、備蓄米の放出と円滑な流通で消費者に早急に届けることです。同時に、米の増産に踏み出す姿勢を示すことです。そのために所得補償の復活など農業生産者への支援を強化することです。市場任せにするのではなく、国が責任を持って米の供給を安定化させる姿勢を示すことで安定した流通が可能になるのです。

 これまでの生産者に自己責任を求める自民党農政を転換し、農業を基幹的産業として位置づけ、米生産の担い手も、農地も増やす政策を考える必要があります。食料自給率の目標45%をかかげるなら、実現するために必要な予算の増額も必要となります。農水産予算は1980年に、3兆6000億円で、軍事予算を上回っていました。ところが、2025年度予算で、農林水産予算は2兆3000億円で、防衛予算8兆7000億円の4分の1になっています。食料、命を支える予算の大幅な増額が必要です。


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