2025年5月18日(日)
東アジアでの平和の準備を
全国革新懇と福岡県革新懇がシンポ
志位・猿田・仲山・纐纈の各氏が発言
![]() (写真)「東アジアでの平和の準備をin福岡」で志位和夫議長の発言を聞く参加者=17日、福岡市博多区 |
シンポジウム「東アジアでの平和の準備を in福岡」(全国革新懇、福岡県革新懇共催)が17日、福岡市内で開かれました。沖縄と九州が戦争準備の「最前線」とされ米軍と自衛隊の増強が進むなかで「平和の準備」を求めることが運動の緊急課題となっているとして議論が行われました。パネリストとして日本共産党議長の志位和夫全国革新懇代表世話人、弁護士の猿田佐世新外交イニシアティブ代表、弁護士の仲山忠克沖縄革新懇代表世話人が発言。山口大学名誉教授の纐纈(こうけつ)厚全国革新懇代表世話人がコーディネーターを務めました。(志位議長発言全文)
「東アジアの平和構築のうえで、日中両国関係の前向きの打開が一つの大きなカギとなっている」―こう強調した志位氏は4月27~29日に日中友好議員連盟の一員として訪中した際、日本共産党の提言「日中両国関係の前向きの打開のために」と「東アジア平和提言」の内容、とくに2008年の日中共同声明で合意した「互いに脅威とならない」の原則を順守することの重要性を中国側に伝えるとともに、東シナ海での力を背景にした現状変更の自制、台湾問題の平和的解決を提起したと報告。中国側が「志位議長の提案を重視する」と表明したことを紹介し、「言うべきことは言いつつ、日中両国関係の前進、東アジアの平和構築のために力を尽くす」と表明しました。
志位氏は、日中間で確認された「互いに脅威とならない」の原則を、19年の首脳会談を最後に、日本側は言及しなくなったと指摘。その理由として、安保3文書に基づく大軍拡を進める上で、自らの手足を縛ることになるからだと強調しました。さらに、米国は08年当時、中国に対して「関与政策」――米国中心の秩序に迎え入れ、責任を果たさせる政策をとっていたが、10年代のある時期から中国を事実上の脅威とみなして軍事的に抑止・包囲し、経済的にも封じ込める政策に転換したことが背景にあると指摘しました。
志位氏は、いま日本政府が「互いに脅威とならない」の原則を積極的に据えることは、日本に敵基地攻撃能力保有や大軍拡の自制・中止を求めるとともに、中国側に東シナ海などでの力を背景にした現状変更の動きの自制・中止を求める根拠となると強調。「両国が軍事対軍事の悪循環に陥ることを防ぎ、友好と協力の関係をつくるために不可欠であるとともに東アジアの平和構築にとって重要な意義をもつ」と語りました。
「どうやって外交で平和をつくるのか」。こう提起した猿田氏は、外交によって、各国の信頼醸成、経済的相互依存の促進をはかることが重要だと訴えました。特に政府間だけでなく議員や市民社会による「トラック2」「トラック3」も含めた多層外交が重要であり、「多層外交の担い手になってほしい」と参加者に呼びかけました。
「沖縄は日本の姿を写す鏡だ」。こう述べた仲山氏は、「有事」に先島諸島の住民ら12万人を県外に避難させる計画を巡り、「『台湾有事』で自衛隊の集団的自衛権発動と先島諸島の戦場化を想定したものだ」と指摘。「戦争する国」づくりの根源に日米安保体制があるとして米軍=「抑止力論」の克服を訴えました。
纐纈氏は「日中は抑止戦略の落とし穴に入り込んでいる。日中は『抑止力』に依存せず、相互和解と軍縮を進めて友好平和を増進すべきです」と語りました。
討論で志位氏は、「猿田さんが外交の本質は信頼醸成だと言ったがその通りだ」と発言。東南アジア諸国連合(ASEAN)で平和共同体づくりが成功している背景として、インドネシアのASEAN本部を訪問した際、「年間1500回もの対話を積み重ね、信頼醸成を深めているから、決して戦争にならない」と言われたと紹介しました。同時に、同国のハッサン・ウィラユダ元外相から「東南アジアにはよい対話の習慣があるが、北東アジアにはそれが欠けている」との指摘をうけたことを挙げ、「北東アジアでも対話の習慣が根づくような努力をしたい」と表明しました。
沖縄・南西地域での「戦場化」を想定しての動きをめぐり、志位氏は「大変に危険な動きだ」として警鐘を鳴らすと同時に、「(軍拡推進論者は)リアリティーのない議論をしている。先島諸島の住民ら12万人を避難させるのはおよそ荒唐無稽だ。日米は日本全土が戦場化することを想定した訓練(キーン・ソード2024)をやっているが、全土が戦場になったら国民はどこに逃げろというのか」と指摘。「リアリティーのある議論は、やはり外交だ。日中関係では、やはり『互いに脅威にならない』原則を守ることが重要だ」と力説しました。
猿田氏が、ASEANでは米中対立のもとでも「どちらの側にもたたない」という固いコンセンサス(一致点)ができていると述べ、「これが世界のマジョリティー(多数派)だ」と強調。それを受けて志位氏は、ASEAN本部を訪問したさい、「大国の関与を歓迎するがどちらか一方の側にたつことはない。それがASEANの中心性ということだ」との説明を受けたことを語り、「今日の世界は一握りの大国の思うがままに動く世界ではない」と強調しました。
シンポジウムには楊慶東駐福岡中国総領事が参加しました。